ねえ、くるり。
なあに、コンブ。
少し前までは無料で不用品を回収してくれる業者さんってけっこういたよね。
うん、そうね。
どうして最近は有料で回収する業者さんばかりになったの?
なるほど。じゃあ今日のテーマはそれにしましょう。

一昔前までは住宅街などを巡回しながら、拡声器で無料の不用品回収サービスを提供する業者が少なからず存在しました。しかし近年そうした業者の姿は不思議と見かけず、不用品回収業を営んでいるのはホームページなどを持つ有料の業者ばかりになっています。この現象には実は不用品回収業界に起きたいくつかの変化が大きく影響しています。ここではその現象の解説を通じて、近年の不用品回収サービスが無料ではなくなった理由を説明します。

INDEX
  1. 無料の不用品回収業者はこうして利益を出していた
  2. 「無料ではやっていけない」理由とは
    1. 海外へのリユース品の輸出制限
    2. 家電リサイクル法の施行
    3. 雑品スクラップの実質取扱中止
  3. 有料だからこそきちんと業者を選びたい
  4. 正しい業者選びが自分と環境を守ってくれる

無料の不用品回収業者はこうして利益を出していた

荷台がいっぱいのトラック

まずはかつて無料で不用品回収サービスを提供していた業者が、どのような仕組みで利益を出していたのかを知っておきましょう。かつての不用品回収業者は、依頼者から回収した品物を主に以下の3つのルートで利益化していました。

ルート 対象となる主な回収品
リサイクルショップ、古物市場などへの卸 中古品として価値がつくもの
発展途上国などへの輸出 まだ使えるが、日本では中古品として価値がつかないもの
雑品スクラップとして専門業者に引き渡す もう使えないが、部品として使われている鉄やレアメタルやレアアースなどが含まれるもの

※雑品スクラップ:鉄やプラスチック、レアメタルやレアアースなどを含む、使用済みの家電や電子機器のこと。

かつてはこれらのルートを活用して、一定以上の利益を出すことができました。とりわけ「発展途上国などへの輸出」「雑品スクラップとして専門業者に引き渡す」の2つのルートを利益源としている不用品回収業者は多く、それらの業者は作業費用を差し引いた実質無料の価格で買い取って、利益化していたのです。

しかし近年では、以前からこうしたルートで回収品を利益化してきた不用品回収業者は廃業に追い込まれているか、もしくは有料での回収に切り替えています。次にその背景について解説していきます。

「無料ではやっていけない」理由とは

「発展途上国などへの輸出」「雑品スクラップとして専門業者に引き渡す」という2つのルートを主な利益源にしていた不用品回収業者が、無料の不用品回収サービスを続けられなくなった理由は、大きく以下の3つの理由があります。

1.海外へのリユース品の輸出制限
2.家電リサイクル法の施行
3.雑品スクラップの実質取扱中止

海外へのリユース品の輸出制限

港湾の輸出ヤード。

日本を含むいわゆる先進国が発展途上国へのもう使えなくなった家電や電子機器の輸出を続けた結果、正しい方法でそれらを処分できない輸出先の国で、環境被害が深刻になりました。

これを受けて日本は1993年に「バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)」を締結、同年に「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」を作り、2013年には環境省が「使用済み電気・電子機器の輸出時における中古品判断基準」を示しました。

これらはもう使えなくなった家電や電子機器を輸出入する際のルールを定めるとともに、まだ使えるか・もう使えないかを判断する際のルールを定めたものです。これにより、比較的簡単に海外へ輸出できた家電・電子機器のリユース品への取り締まりが厳しくなりました。

その結果、不用品回収業者が輸出業者に持ち込む回収品のうち、商品として買い取ってもらえる回収品が減り、逆に引き取り料金を支払わなければならない回収品が増えてしまったのです。すると不用品回収業者の利益は自然と目減りしてしまいます。そのぶんを補うために、依頼者に作業費用を負担してもらうなどして利益を確保しなければならなくなったというわけです。

家電リサイクル法の施行

エアコン

2001年4月1日から施行された「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」は、もう使えなくなった使用済み家電を資源として適切に処分するための取扱方法について定めた法律です。

この法律によって不用品回収業者は、エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の回収に関しては、依頼者から千円〜数千円のリサイクル料金と指定リサイクル工場までの運搬費用を徴収しなければならなくなったのです。無料での回収を維持するためにこのリサイクル料金と収集運搬費用を負担し続ければ家電を回収するほど赤字が増えるという状況になります。

そのため近年では年式の古かったり壊れていたりするリサイクル家電(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機
)の回収を無料で行うことができなくなったのです。
※リユース目的での回収であれば、再販時に利益確保ができる可能性があるので、品物によっては無料回収してくれる回収業者もあります。

雑品スクラップの実質取扱中止

「不用品回収業者は鉄やプラスチック、レアメタルやレアアースなどを含む家電や電子機器を無料で回収して、それらを高く買い取ってくれる業者に持ち込み、荒稼ぎしている」

こんな噂を耳にしたことがある人もいるかもしれません。実際、かつての不用品回収業者は家電や電子機器としてもう使えなくなったものでも、素材の価値を考慮して、作業費用を差し引いた実質無料の価格で買い取ることもありました。

というのも中国が雑品スクラップと呼ばれるこれらの家電や電子機器を高値でまとめて買い取ってくれていたからです。不用品回収業者は中国に雑品スクラップを輸出する業者やその下請け業者に回収品を買い取ってもらい、それを利益にしていました。

中国大陸。

しかし中国は2017年末に雑品スクラップに関する輸入規制を強化したうえ、2018年には同年末からの雑品スクラップ事実上輸入禁止を発表しました。日本の雑品スクラップ市場は中国への輸出を前提とする市場です。そのためこの発表をもって、不用品回収業者による雑品スクラップの利益化は、非常に難しくなったのです。

その結果不用品回収業者は雑品スクラップの回収を断ったり、回収するにしても一般廃棄物収集運搬業許可という特別な許可を取得したうえで、専門の処分業者に廃棄物として持ち込んだりすることになります。いずれにせよ、雑品スクラップが利益化できていた頃に比べれば、不用品回収業者の利益は減っています。その結果無料での回収から、有料での回収に切り替えざるを得なくなったのです。

有料だからこそきちんと業者を選びたい

なるほど、無料じゃなくなったのには、ちゃんと理由があるんだね。
そうなの。不用品回収業者さんたちも大変なのよ。
でもさ、くるり。
なによ、コンブ。
今でも無料回収とか、格安回収を売りにしている業者さんもいるよね?
うんそうね。それにはちょっと事情があって……。
事情?

確かに今でも「無料回収」「格安回収」をアピールしている業者がいないわけではありません。しかしこうした業者を利用しようとする際は、細心の注意を払う必要があります。理由は大きく2つです。

第一に不当に高額な料金を請求されるかもしれないからです。こうした業者の中には例えばトラックに積み込んでから「回収は無料ですが、トラックへの積み込みに○万円必要です」と言ったり、依頼者が「じゃあトラックから下ろしてくれ」と言えば「下ろすのにも作業料金が○万円必要です」と言ったりする業者もいます。

第二に本当に他の業者に比べて極端に安い料金で回収してくれたとしても、そのあと不法投棄などの違法な手段で回収品を処分している可能性があるからです。不用品回収業者の実状大公開!依頼時に出る疑問を徹底解説でも解説していますが、回収品を利益化するにはある程度の費用がかかります。そのため近年の不用品回収業者は、そうした費用を考慮に入れた作業料金を設定するケースが増えています。

しかし格安で回収してしまうと、利益化のための費用を回収品にかけられなくなります。結果「利益化するよりもその辺に捨ててしまった方が儲かる」という考え方になり、不法投棄などの手段をとる場合があるというわけです。

このような不用品回収業者に依頼をしてしまうと、依頼者にとってはもちろん環境にとってもマイナスになってしまいます。これを防ぐためには、ある程度お金がかかったとしても、依頼者側が正しく不用品回収業者を選ぶ基準を持つ必要があります。違法な不用品回収業者ってどういう人たち?見極めるポイントをご紹介では、そのための考え方を詳しく紹介しています。参考にしてみてください。

……ということなの。
「無料回収」「格安回収」は危険、ってことかあ。
それはちょっと違うかも。中には企業努力で他社より安い料金設定にしているところもあるから。
むむむ……。そうなると、やっぱり依頼者側がちゃんと基準を持っておきたいところだね。
もちろん業界側も努力してるんだけど、依頼者側にも歩み寄ってもらう必要はあると思う。

正しい業者選びが自分と環境を守ってくれる

不用品回収業界の変化により、近年の不用品回収業者はサービスを有料化せざるを得なくなっています。企業努力により、作業料金を抑えている業者も数多くするものの、極端に安くしてしまうと商売として成立しないのが実状です。

確かに違法な手段を使えば商売を続けられるかもしれませんが、その場合は依頼者や環境に被害が出る可能性があります。そのような事態にならないためにも依頼者側は正しい業者選びの基準を持ち、自分の力で自分と環境を守る必要があるでしょう。