映画やドキュメンタリー番組などにもなった遺品整理の仕事は、いまや一大ビジネスになりつつあります。実際遺品整理業に参入する業者も増えています。一方で遺品整理サービスに関するトラブルも発生しており、2018年の国民生活センターの発表によれば、遺品整理サービスでの契約トラブルは毎年100件前後発生しています。その大部分が作業内容や料金によるものです。
そのため、消費者側が遺品整理業者を選びにくくなっているのが現状です。料金の安い・高いで選べば良いように思うかもしれませんが、大切な遺品を任せる業者を選ぶわけですから一概に安い=良いと考えると思わぬ失敗をする可能性もあります。
ここでは遺品整理業者選びのチェックポイントを6つに分けて解説するとともに、料金が高い業者はなぜ高くなるのか、料金が安い業者はなぜ安くでサービスを提供できるのかについても解説します。
遺品整理業者を選ぶための6つのチェックポイント
数多く存在する遺品整理業者ですが、ポイントさえ押さえておけば選ぶのはそれほど難しくはありません。以下では6つのチェックポイントを、優先度順に並べて解説します。チェックがつけばつくほど、そして優先度の高いものにチェックがつくほど、その業者は信頼できる可能性が高いということになります。
自宅がサービス圏内か?
最初にチェックするべきは、そもそも自宅(遺品整理が必要な場所)がその業者のサービス圏内に含まれているかです。サービス圏外でも対応してくれる業者もいるかもしれませんが、その場合は多額の出張費が必要になる可能性があります。
「どうしてもこの業者に頼みたい!」といった希望がない限りは、サービス圏内に入る遺品整理業者を選びましょう。
いちいちサービス圏内を確認するのが面倒だという人は検索するキーワードを「市町村名 遺品整理」にして、絞り込みをかけてみてください。そうすれば比較的近隣の業者ばかりが検索結果に表示されるはずです。
求めているサービスを提供しているか?
遺品整理サービスと一口に言っても、実際に提供しているサービスは業者によって様々です。
・貴重品、処分品の仕分け
・遺品の買取
・遺品の供養
・重要書類、貴重品の探索
・不用品の処理
・遺品整理後の清掃
・遺品の梱包
・搬出時の養生
・特殊清掃
・リフォーム
・不動産整理などの各種手続き
詳細は遺品整理ってどんなサービス?遺品整理業者が行ってくれる9つのことを参照ください。
こちらは遺品整理業者が提供している主なサービスです。この中から自分が求めているサービスの見当をつけて、そのサービスを提供している業者かどうかでさらに絞り込みをかけていきましょう。
この際、知っておくと役立つのがサービス内容に応じた選び方です。以下にその内容をまとめておきますので、こちらも参考にしてください。
サービス内容 | 選び方のポイント |
---|---|
貴重品・処分品の仕分け | ・立会いのもとで仕分けしてくれるか? ・大切に遺品を扱ってくれるか? |
遺品の買取 | ・適切な価格で買取してくれるか? ・幅広いリユース・リサイクル品の流通網を持っているか? ・古物商許可を持っているか? |
遺品の供養 | ちゃんと寺院と提携しているか? |
重要書類・貴重品の探索 | ・立会いのもとで仕分けしてくれるか? |
処分品への対応 | ・一般廃棄物収集運搬業許可を持っているか? ・もしくは許可を持っている業者と提携しているか? |
形見分け品の配送 | ・大切に遺品を扱ってくれるか? ・業者自身が配送する場合、各種運送業許可もしくは届出があるか? |
遺品の梱包 | ・大切に遺品を扱ってくれるか? ・梱包材は業者が用意してくれるか? |
搬出時の養生 | ・実績、技術を持っているか? |
生前整理 | ・遺品整理の実績を積んでおり、遺すべきもの、遺さなくてもいいものを熟知しているか? |
特殊清掃 | ・実績、技術を持っているか? |
リフォーム | |
ハウスクリーニング | |
不動産整理などの各種手続き | ・どのような専門業者と提携しているか? |
サービス内容に応じた許可・届出があるか?
次にチェックするべきは、先ほどの表でも少し触れている許可・届出についてです。
遺品整理業者のサービス内容は多岐に渡るため、サービスごとに必要な許可や届出が変わります。これらがないままサービスを提供してい流場合は、違法な業者である可能性があるため、注意が必要です。
許可・届出が必要なサービス | 必要な許可・届出 |
---|---|
遺品の買取 | 古物商許可 |
処分品への対応 | 一般廃棄物収集運搬業許可 (業者自身もしくは提携業者に必要) |
形見分け品の配送 | 一般貨物自動車運送事業許可 もしくは貨物軽自動車運送事業の届出 (配送する際に運賃が必要な場合) |
リフォーム | 内装仕上工事業など施工内容に応じた許可 (費用が500万円以上かかる場合) |
このうち特に注意すべきは処分品に対応するための一般廃棄物収集運搬業許可です。なぜならこの許可を取得していない業者が不法投棄などを行なった場合、その処分品を引き渡した消費者側も罪が問われる可能性があるからです。
そのため遺品整理業者選びの際は、業者が処分品をどう取り扱うのかについてあらかじめ確認するようにしましょう。
料金設定・見積もり内容が明瞭か?
悪質な遺品整理業者の典型的な手口は、最初は安く見積もっておいて後から数倍の料金を請求するというやり方です。その言い分は「予想以上にゴミがあったので、処分費用が加算されます」「見積もり内容以上のことを当日に依頼されたので、オプション費用が加算されます」といったものですが、往々にしてそれらは常識の範囲を超えた高額な料金になります。
このような事態を避けるためにチェックしておくべきなのが、料金設定と見積もり内容です。悪質な業者ほど、料金設定をやたらと複雑にしたり、見積もり内容を曖昧にしたりして、いったいどんなサービスが料金や見積もりに含まれているのかどうかわかりにくくする傾向にあります。
またトラック詰め放題やコミコミパックと称するようなサービスにも注意が必要です。確かにこれらは一律料金になっており、一見するとわかりやすい料金設定に思えます。
しかし遺品整理の場合、一軒家などになると作業をするまで何が出てくるかわかりません。加えてこの種のサービスはどんな作業がどこまで料金に含まれているのかも不明確になりがちです。そのため後から思わぬ追加料金を請求される可能性が高くなります。
したがって遺品整理業者選びの際は、その業者の料金設定や見積もり内容が明瞭かどうかをチェックする必要があるのです。
電話やメールの対応に違和感はないか?
遺品整理業者は、亡くなった人の大切な遺品を任せる相手です。そのためどんなにきっちりと法律を守っていても、どんなに料金設定や見積もり内容がわかりやすくても、接客時の対応が自分と合わなければ気持ちの良い遺品整理にはなりません。
対応の良し悪しは、ネットの口コミなどでもある程度までは判断できます。しかし最も重要なのは自分と合うかどうかなので、最終的な判断は自分がその業者とやり取りをする必要があります。
その際の判断要素となるのが、最初の相談や質問の際の電話やメールの対応です。ここで気分を害したり、違和感を抱いたりするような対応であれば、その業者とは合わないと判断するのが無難でしょう。
遺品整理士資格を持っているか?
遺品整理業界には遺品整理士という資格があります。この資格は国家資格などではなく、業界の体質改善のために遺品整理士認定協会という民間団体が立ち上げた民間資格です。
そのため「この資格を持ってないからダメな業者」「この資格を持っているから良い業者」と一概に判断することはできません。しかし取得には一定のお金がかかり、教本による勉強も必要です。また資格取得後は、遺品整理士認定協会の主催するセミナーなどにも参加できるようにもなります。
そのため資格の有無は、コストをかけて勉強や情報収集をしているかどうかの指標にもなりうるのです。
ただし資格を持っていなくても勉強や情報収集といった企業努力をしている業者もたくさんあります。また企業アピールのために技術を磨いたり、実績を積むより先に遺品整理士資格を取得しているだけという業者も存在します。
したがって遺品整理士資格を持っているかどうかは、あくまでも参考程度のチェックポイントだと考えるのが無難と言えそうです。
料金が高い業者と安い業者の違いとは?
遺品整理業者選びの際に、最も大きな基準になるのは料金が安いか高いかという点でしょう。この違いは細かい部分や見えない部分に隠れているため、ホームページを一見しただけではわからない場合も少なくありません。
以下ではなぜ料金が安い業者が、高い業者に比べて安くできるのかについて、2つの切り口から考えてみましょう。
企業努力で安くしているケース
一つ目の切り口は企業努力で安くしているという見方です。例えば作業員の技術を磨いて作業効率を上げたり、純粋に一人当たりの作業量を増やし、無理なく人件費を抑えれば、消費者が支払う料金も安くすることが可能です。
あるいはトラックへの積み込み方を工夫したり、見積もりを正確に行うことで必要十分なサイズのトラックを選定したりできれば、必要以上に大きなトラックを手配しなくて済むので、ここでも料金を安くできます。
他にも各種サービスに必要な許可や資格を取得したり、届出を提出したりして、自社でまかなえるサービスを増やせば、他社への委託手数料を抑えられるので、料金を安くすることが可能です。
無茶をして安くしているケース
とはいえ、こうした企業努力による低料金化には限界があります。作業員が10人必要な現場を2人だけで対応することはできませんし、4トントラックが必要な現場に軽トラックで行くわけにもいきません。
しかし実際には極端に料金が安い業者も存在します。それが二つ目の切り口である無茶をして安くしているという見方です。
無茶の典型的な例は不法投棄です。遺品整理という商売は実はそれほど利益の大きなものではありません。例えば消費者に20万円を請求していても、大半が経費で消えてしまい、純粋な利益は3〜4万円というケースも少なくありません。
ではこの経費とは何かといえば、主に処分品の廃棄費用と人件費です。人件費を削るのには限界があるため、無茶をする業者はまず廃棄費用を削るために不法投棄を行うのです。これは当然違法行為ですし、環境を破壊する行為でもあります。また前述したように場合によっては依頼をした消費者が罪に問われる可能性もあります。
不法投棄をせずに、人件費から削ろうとする業者も存在します。一見すると懸命な努力にも思えますが、これは結果的に消費者にとってのデメリットになりかねない無茶です。
なぜなら人件費を削ると従業員の退職率は上がる一方、残った従業員のモチベーションは下がり、結果として質の高いサービスが提供できなくなる傾向があるからです。
このほか、前述したような最初から高額な追加料金を請求する腹づもりで、安い料金を提示している悪質な業者の存在も考慮する必要があります。
極端に安い業者には注意が必要
このように考えると、料金が安いか高いかだけで遺品整理業者を選ぶという行為がどれだけハイリスクなものかがわかるのではないでしょうか。特に極端に料金が安い業者に関しては、結果的に消費者側のデメリットにつながるため、より慎重に料金が安い理由を確かめる必要があるでしょう。
まとめ
何の指標もない状態で、数多ある遺品整理業者の中から実際に依頼をする業者を選ぶのは大変な作業になります。しかしここで紹介した6つのチェックポイントを使えば、比較的スムーズに業者の絞り込みができるため、業者選びの負担もぐっと軽くなるはずです。
遺品整理業者を探すということは、大切な家族を亡くして心身ともに疲れている人も多いはず。その際の無駄な手間と時間、不安をなくすためにも、ぜひ6つのチェックポイントを活用してください。