INDEX
  1. 本当にあった「押し買い」の怖い話
    1. 「着物買取」を装って、無理やり貴金属を買い取る
    2. 突然やってきて、素性を明かさず帰っていく
    3. 事前に話していたもの以外の不用品をしつこく要求
  2. 「押し買い」を見分けるための3つの特徴
    1. 特徴その1:貴金属にやたらと執着する
    2. 特徴その2:素性を明かさない
    3. 特徴その3:断ってもしつこく勧誘してくる
  3. 「押し買い」にあわない・あわせないための6つの対処法
    1. 対策その1.「安心できる業者」を知る
    2. 対策その2.電話の勧誘は「一度切る」
    3. 対策その3.飛び込み営業には「名刺をもらう」
    4. 対策その4.高齢者の家族には「怖がってもらう」
    5. 対策その5.不安になったら必ず「書面」を交付してもらう
    6. 対策その6.相手の素性を聞き出し、記録する
    7. 被害に遭ったら消費生活センターへ
  4. 「押し買い」にはとにかく冷静に対応しよう
この前、私のおばあちゃんが「押し買い」に遭っちゃったんだ……。
それはひどい……押し買いは立派な犯罪だよ!

消費者の自宅を訪問し、そこで家具や家電、洋服や貴金属などの不用品を買い取ることを「訪問購入」と言います。これは法律で認められたれっきとしたビジネスですが、一方で消費者の意思を無視した強引な買取は「押し買い」と呼ばれ、悪徳商法として取り締まられています。

押し買いは2010年を境に急増、2013年に法律の規制が強化されたあとは激減したものの、今なお被害に遭う人は少なくありません。ここでは押し買いの実例を紹介しながら、被害に遭わないために知っておくべき、押し買い業者の特徴と効果のある対策を紹介します。

自分も含めて、大切な人を守るためにも知っておかなくちゃ!

本当にあった「押し買い」の怖い話

消費者庁の調査によれば、2009年に137件だった押し買いを含む「貴金属等の訪問買取に関する年度別相談件数」は、2010年には2,367件に急増。その後は減少傾向にあるものの、まだまだ被害者に遭う人は少なくありません。ここでは消費者庁に寄せられた情報や、実際に消費者庁が悪徳業者として摘発した業者の実例を紹介します。

「着物買取」を装って、無理やり貴金属を買い取る

ある日突然、一人暮らしの高齢女性の家に「不要な着物を買い取ります」という電話がありました。女性は「そういえば処分しても良い着物があった」と言い、相手と訪問する日を決めます。

後日若い男が訪ねてきて、その着物を300円で買い取ると女性に告げます。女性はあまりにも安いと感じたものの、「要らないものだし」と売ってしまうことにします。すると男は突然「貴金属の鑑定もしてあげますよ」と言い出し、いきなり女性の指についている指輪を外しにかかったのです。

女性は必死になって断りましたが、男は執拗に食い下がります。怖くなった女性は手持ちのネックレス、指輪、ブレスレットの計3点を見せたところ、男は「合計で1,700円で買い取る」と言い出し、一方的に代金と領収書を突きつけたうえ、さらに「古銭や切手はないか」と要求を続けました。

突然やってきて、素性を明かさず帰っていく

飛び込みで営業をする押し買い業者。

不要な貴金属はありませんか」と飛び込みの業者が被害者の自宅にやってきました。

「出せ」「出せ」と急かされたために、母親の形見の指輪などを見せたところ、業者は重さを計るフリだけをして、何の説明もなしに1万円と領収書だけを渡し、あっという間に指輪を持って帰ってしまいます。

被害者が「安すぎるのではないか」などと考える間もなく取引は終わってしまい、被害者はその業者がどこの誰なのかもわかりません。被害者は途方にくれる他ありませんでした。

事前に話していたもの以外の不用品をしつこく要求

「スピード買取.jp」、「着も乃屋」、「宝飾倶楽部」などの名前で訪問購入を行なっていた株式会社ランド。同社は新聞やウェブサイトに広告を出し、そこから電話で問い合わせをしてきた消費者に訪問購入を行なっていました。

しかし電話では着物や毛皮などについて買取をすると言っておきながら、消費者の自宅にやってくると着物や毛皮などを見たあとに唐突に「貴金属はないか」と買取の勧誘を開始。消費者が貴金属を出さないとなると、「ひとつくらいならあるでしょう」「なんとかお願いしますよ。ここまでのガソリン代もかかっているんですよ」「このまま手ぶらで帰ると上司に怒られてしまいます」などと言ってしつこく要求していました。

同社は2015年3月20日に消費者庁から特定商取引法にのっとった訪問購入をするよう、直接指導を受けています。

リサイクル業者を装うなんて、リサイクルショップを経営している者として許せないよ!
くるりのおばあちゃんも、怖かっただろうね……。

「押し買い」を見分けるための3つの特徴

このように押し買い業者の手口は実に様々ですが、共通点もあります。以下では押し買い業者の特徴として挙げられる3点を解説しましょう。

特徴その1:貴金属にやたらと執着する

押し買い業者が執着する貴金属。

大半の押し買い業者に共通するのが、「貴金属への執着」です。2010年前後に押し買い急増した際に問題視されたのも、基本的には貴金属に関する訪問購入でのトラブルでした。とはいえ最初は家電や家具、着物や毛皮などの買取で来た業者でも、話の流れで「貴金属なども買い取れますよ」と言うことはあります。そのため、貴金属の話を出した=押し買い業者というわけではありません

しかし紹介した事例にもあるように、押し買い業者は、あらかじめ約束していた品物などそっちのけで「貴金属を出してください」「壊れていてもいいから」「ひとつでもいいから」と勧誘する傾向にあります。そのため「この業者、なんだかずっと貴金属ばかり要求してくるな……」と感じたら、「押し買いかもしれない」と警戒した方がいいでしょう。

特徴その2:素性を明かさない

押し買いに遭ったからと消費生活センターや警察に相談しようとしても、相手がどこの誰かがわからなければ相談のしようがありません。押し買い業者もそれを十分理解しています。

そのため押し買い業者の中には、名前や住所などの素性のほか、取引した品物や金額などの記録を一切残さずに姿を消す業者もいます。あるいは「教えてもらった会社の住所を検索したら、そこには誰も住んでいなかった」など、嘘の情報を伝えるような業者も存在します。

したがって自宅に訪ねて来た業者が、こちらから訪ねても名乗らなかったり、会社の名前や住所をインターネットで検索しても情報が出てこなかったりすれば、「合法的な業者ではないのかも」と疑ってかかるのが無難でしょう。

特徴その3:断ってもしつこく勧誘してくる

・飛び込みでやってきてドアを激しく叩き、対応するまで諦めない。
・「貴金属はない」と言っても「他にもあるでしょう。見せてください」などと言って要求を続ける。
・「安いから売らない」と言うと「今売らないと相場が下がって損をしますよ」などと食い下がる。

押し買いをしようとする業者は、消費者が断っても簡単には諦めません。あの手この手で食い下がった挙句、消費者が根負けして「見せるだけなら」「ひとつだけなら」と譲歩すれば、これ幸いとそのまま押し切ろうとします。訪問購入の勧誘を受けて、こうした異常な「しつこさ」「強引さ」を感じたら、警戒心を強める必要があるでしょう。

でもいざこういう場面になったら、怖くて頭が真っ白になりそう。
そうならないためにも、あらかじめ対策を立てておかないとね!

「押し買い」にあわない・あわせないための6つの対処法

押し買い業者への対策を教えてくれる女性。

上記のような業者以外にも、認知症の高齢女性の家に上がり込み、他の家族がいないのを良いことに、勝手にタンスの中の貴金属をあさるような空き巣と変わらない業者も存在します。これらの押し買い業者の被害に自分が遭わない、もしくは自分の家族を遭わせないためには、2つのポイントを押さえておく必要があります。

1.「怪しい人」を家に入れない

一度家に入られてしまうと、業者の押しの強さに負けてしまい、そのまま押し買いの被害に遭ってしまいがちです。そのため、相手が合法的な営業を行っている会社の人間かどうかを確かめるまでは、とにかく家に入れないことが重要です。

2.もし入れてしまったら「記録」を残す

とはいえリサイクル業者を装う押し買い業者も多いため、家に入れる前の段階で確実に消費者が押し買い業者だと判断するのは至難の技です。しかし家に入れてしまっても、押し買いの被害に遭わない方法があります。

それは記録を残すこと。相手がどんな人物だったか、相手とどんな取引をしたのかを記録していれば、もし大切な品物を無理やり買い取られてしまっても、あとで対処できる場合があります。

以下ではこの2つを踏まえたうえで、6つの対処法を紹介します。

対策その1.「安心できる業者」を知る

相手が怪しいか、怪しくないかを判断するためには、まず判断のための基準を持つ必要があります。

こちらの記事では、訪問購入を行う不用品回収業者を見極めるためのポイントを紹介していますが、ここで紹介しているポイントは着物や毛皮などを買い取る業者の場合も同じです。「どういう業者が怪しいのか」をこの記事を読んで、しっかりと予習しておきましょう。

対策その2.電話の勧誘は「一度切る」

話術が巧みな押し買い業者も少なくありません。そのような業者は電話での勧誘でも、消費者に「この業者は大丈夫かな」「なんだか怪しいかも」と考えさせる時間や余裕を与えず、あっという間に訪問の約束を取り付けてしまいます。

このように相手のペースに巻き込まれてしまわないためには、まず一度電話を切ることが大切です。「他の業者と相見積もりを取ってみたい」「家族と相談したい」と言って、名前と連絡先を聞き出し、一度電話を切りましょう。そしてインターネットなどを使って相手について調べ、依頼をしても問題ないかを判断するのです。

もちろん何の問題もない業者の場合もあるため、そのときは安心して買取を依頼すればOKです。

対策その3.飛び込み営業には「名刺をもらう」

アポイントのための電話をせず、いきなり飛び込みで勧誘をする押し買い業者もいます。本来なら無視をするのが一番ですが、「相手が何者かもわからないのに無視をするのは心苦しい」という人もいるでしょう。そのような場合は、名刺など相手の身分がわかるものを受け取り、一度帰ってもらうようにしましょう。そうすれば落ち着いて相手の素性を調べられます。

ただしその際は絶対に玄関に入れないこと。足の一本でも扉の中に入れてしまうと、そのまま相手のペースに巻き込まれるからです。そのためチェーンをかけるなどして、対策を講じてから対応するようにします。

対策その4.高齢者の家族には「怖がってもらう」

高齢者の場合、家族が上記のような対処法を言って聞かせても、実践するのが難しい人もいます。そのような場合は、心苦しいかもしれませんが、少し怖がってもらうことも必要です。

例えばここで紹介したような「勝手に家に上がられてタンスをあさられる」「大きな体の若い男性がやってきて凄まれる」といった実例を話しておくのです。そして「もしそういう電話や飛び込みでの勧誘が来たら、まず家族に連絡してね」と伝えておきましょう。そうすれば大切な家族が怖い思いをしなくて済むはずです。

対策その5.不安になったら必ず「書面」を交付してもらう

最初は信用して家に入れたものの、話していると押し買い業者の特徴に当てはまるような言動が増えてきて、不安になったとします。その場合は何が何でも契約書などの書面を交付してもらいましょう。訪問購入を行う業者には原則として書面の交付が義務付けられており、その書面には以下のような内容の記載が義務付けられています。

・品物の種類
・買取金額
・支払いのタイミングと方法
・消費者側に所有権がなくなるタイミング
・クーリング・オフの可否
・事業者の氏名(名称)、住所、電話番号、法人の場合は代表者の氏名
・担当者名
・契約年月日
・品物の商品名やメーカー、品番や数 など

消費者自身が買取金額や相手の対応に満足しているのであれば取引上の問題はありませんが、少しでも不安がある場合は必ず書面の発行を要求しましょう。もしそこで相手が嫌がったり、怒ったりするようなら、何かやましいことがある可能性があります。

対策その6.相手の素性を聞き出し、記録する

前述したように相手の情報が何もなければ、消費生活センターや警察に助けてもらえません。そのような事態を防ぐには、できるだけ相手の情報を聞き出し、記録しておく必要があります。

「うまく聞き出す自信がない」という場合は、携帯電話やスマートフォンで作業風景を写真に撮るというのも方法の一つです。被害に遭ったあと、相手へとつながる情報をできるだけ多く集めておきましょう。

被害に遭ったら消費生活センターへ

消費生活センターは独立行政法人国民生活センターの中の通報・相談窓口です。基本的には全国の市町村ごとに設置されているため、被害に遭った場合は自分が住んでいる地域のセンターに相談する必要があります。全国の消費生活センターの連絡先などはこちらから参照してください。

コンブ:「怪しい人を家に入れない」「入れてしまっても記録を残す」これが大原則だね!
くるり:自分や家族の身は、自分たちで守らないといけないね。

「押し買い」にはとにかく冷静に対応しよう

押し買い業者にとって最も都合がいい被害者は、自分たちのペースに簡単に巻き込まれてくれて、混乱している間に取引が済ませられる相手です。逆に言えば常に冷静で、自分たちのペースに巻き込まれない相手は厄介なのです。ここで紹介した特徴と対策をあらかじめ理解しておき、万が一被害に遭いそうになっても、冷静に対応できるようになっておきましょう。

「自分や家族に限っては大丈夫」と思っている人も多そうだなあ。
確かにね。くるりやくるりの家族はおばあちゃんのことで押し買いの怖さがわかったけど……。
余計な怖い思いをしないためにも、「万が一」を考えて日頃から注意してほしいな!
そうだね!

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