遺品整理って大変だよね……。
と、突然どうしたの?
うちのリサイクルショップに出入りしてる不用品回収業者の人から現場の話聞いたんだ。
なるほどね。確かに遺された家族の気持ちを考えると、大変な作業だよね。

近年遺品整理業者や遺品整理サービスを行う不用品回収業者が増えているのは、それらを利用する遺族が増えてきているからです。自分が生まれ育った実家や、大切に育ててもらった家族が使っていた物を片付けるのは、ただでさえ精神的に辛い作業です。

しかし実家から離れて仕事をしているような人からすれば距離や時間の問題も無視できません。だからと言って何もしないまま放置しているわけにもいかないでしょう。

ではいったい遺された家族は遺品とどう向き合うべきなのでしょうか。ここでは遺品整理が必要になる場面で起こりうる問題や解決策について考えます。

INDEX
  1. 遺品整理が必要な時は必ずやってくる
  2. 遺族は遺品とどう向き合うべきか?
    1. 遺品整理が必要になった時に起こりうる問題
    2. 考えうる解決策は?
  3. まとめ

遺品整理が必要な時は必ずやってくる

でもさ、くるりはまだ若いんだし、遺品整理の心配なんて必要ないんじゃない?
確かにまだ先の話だけど、でもいつかは必ず考えなきゃいけないことだよ。
そうなの?
うん。今の日本の状況を考えるとね……。

今はまだ自分も親も若いから、遺品整理について今から考える必要はないと思っている人も多いかもしれません。しかし今後の日本の状況を考えると、今の現役世代の大半がいずれは遺品整理への対応を迫られることになりそうです。

少子高齢化の図

その理由は大きく2つあります。一つは少子高齢化です。内閣府の調査によれば、2016年10月1日現在の高齢者率(65歳以上が全人口に占める割合)は27.3%にも上り、実に4人に1人以上が高齢者という状況です。高齢者は昔から多かったわけではなく、1950年には全人口の5%、1970年には7%にすぎませんでした。

しかし1994年に14%を超え、それからたった20年と少しでさらに13.3%も増えています。この傾向は今後も続き、2065年には40%弱になると予測されています。一方で日本の出生率の低さも深刻で、現役世代(15〜64歳)の人口は年々減少しています。このままいくと2065年には1.3人の現役世代が1人の高齢者を支えるという社会が到来すると言われています。

このような状況になれば、自分以外の親族に自分の親の遺品整理をしてもらおうにも、そもそも親族が自分しかいないというのが一般的になります。そうなれば、必然的に遺品整理に対応するのは自分自身ということになるでしょう。

もう一つの理由は、従来に比べて地元を離れて都市圏に働きに出ている人が増えているという点です。2016年11月13日に放送された『NHKニュース おはよう日本』で、地方の若者の県外流出が問題視されていることからも、実家から遠く離れて生活している人が増えていることがわかります。

この傾向が今後も続くとしたら、それはすなわち親の遺品整理をするために仕事を休まなければならない人が増えるということです。

実家で一緒に住んでいた親が亡くなって、その遺品整理をするのであれば、仕事終わりや週末にコツコツと進められるかもしれません。しかし遠方で仕事があるとなれば、毎週末交通費をかけて遺品を整理しに来なければなりません。こうなると遺品とどう向き合うか、遺品整理にどう対応をするかはより深刻な問題になります。

あれ、ひょっとして、僕も遺品整理について考えとくべきなの?
そうよ、他人事じゃないんだから。一緒にちゃんと考えようよ。
う、うん……。

遺族は遺品とどう向き合うべきか?

遺品整理が必要になった時に起こりうる問題

まず遺品整理が必要になった時、どのような問題が起こりうるのかを考えておきましょう。もちろん実際には家族ごとのケースバイケースですが、共通して起こりうる問題もあります。以下では考えておくべき4つのケースを紹介します。

感情的になってしまって手が止まる

親が書きためていた日記や、大切にとっておいてくれた子供の頃の玩具、小さい頃の写真など、遺品を整理するとなれば親と自分の思い出に触れることになります。

故人への思い入れが強いほど、それらの遺品を片付ける作業は胸が痛むでしょう。そのたびに手を止めていては、一向に作業が進まないことは誰しもわかっているのですが、だからと言って感情の問題は無視できません

遠方で経済的・時間的に作業が進まない

前述したように地元を離れて他の都市などで働いていると、毎週のように交通費をかけて実家に通い、遺品整理を進めなければなりません。

毎週時間を確保できればまだ良いほうで、仕事が忙しくて休みが取れない場合や、休みは取れても体力的に実家まで戻っている余裕がないという場合も考えられます。そうなればますます作業は進みません。

慌てて遺品整理を進めてしまってトラブルになる

口論をする男女

「じゃあ一度にさっさと終わらせてしまえばいい」と思うかもしれません。しかし慌てて遺品整理を進めてしまうと、それがもとに遺された家族の中にしこりが残る可能性もあります。

例えば兄弟に了承を得ずに作業を進めた結果、のちのち兄弟たちから「親の形見を自分たちの了承も得ずに処分した」と言われ続けたり、財産分与などに関係のある書類をそうとは知らずに捨ててしまったり、という具合です。

放置した結果特定空き家に指定されてしまう

今のところは遺品整理をしている余裕がないから、自分に余裕ができるまで放置しておけばいいだろうと考えている人もいるかもしれません。しかしその場合は、2015年に施行された「空き家対策特別措置法」における特定空き家に指定されないよう注意する必要があります。

特定空き家とは以下の4点のいずれかに該当する空き家を指します。

1. そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
2. そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

特定空き家に指定されると、本来空き家が受けられるはずの固定資産税の減税措置が受けられず、その結果固定資産税が3〜4倍になってしまいます。親の遺品を保管しておくためのコストだと考えられるのであれば別ですが、そうでない場合は住んでもいない家の固定資産税を通常よりも多く負担することになります。

けっこう考えなきゃいけないことがあるんだね。
そうね。私も地元を離れてるから、スムーズにはいかなそう。
むむむ……。どんな解決策があるんだろう?

考えうる解決策は?

こうした事態に対して考えうる解決策としては、大きく以下の3つが考えられます。

生前に整理をある程度進めておいてもらう

遺された家族では思い入れが強すぎて処分できないものも、亡くなった本人であれば簡単に処分できる場合があります。また財産分与などに必要な大切な書類も、本人の方がよくわかっているはずですから、他の不用品やゴミに紛れないような場所に保管しておいたり、家族に渡しておいたりすることもできるでしょう。

亡くなる前から亡くなった後の話をするのは気がひけるかもしれませんが、もしそれができるような関係性や状態であるのなら、お互いのためにも一度生前整理について話し合うのも一つの解決策です。

それでも自分たちで時間と手間をかけて進める

色々なコストやリスクを考えて、それでも自分の手で遺品整理を進めたいと考えるのも立派な選択肢です。ただしその場合は感情の問題や、経済的・時間的な問題をあらかじめ考慮したうえで、手順やルールをきっちり決めてから作業を進めるようにしましょう。

開かれたアルバムと遺品整理現場

例えば日用品や消耗品など、あまり思い出や思い入れがないものから手をつけていけば、比較的スムーズに作業がスタートできます。もしその作業中に思い出や思い入れのあるものを見つけたら、ひとまずそれは脇に置いておいて目の前の作業を進めるようにすれば、時間がいたずらに過ぎることもありません。

また遺された自分たちに必要なものか・不要なものかを基準に、不要なものは全て処分していくというルールも効果的です。これにより「まだ使えるし」という理由で処分をためらう無駄な時間を排除できます。故人が生前まで使っていたのですから、まだ使えるのは当たり前です。そのため、極端な言い方ですが、遺品整理の際に使えるかどうかを処分するかどうかの基準にするのは「全部処分しない」と言うのと同じなのです。したがって処分するかどうかは必要か不要かで判断する方が良いでしょう。

こうした工夫をせずに行き当たりばったりで遺品整理に臨めば、必要以上に心身を消耗してしまいます。そのため、故人や気持ちの整理のために自分の手で遺品整理をすると決めたのであれば、あらかじめ相応の手順とルールを決めることをおすすめします。

プロの遺品整理サービスを利用する

様々な理由から自分の手で遺品を整理するのは難しいという場合は、プロの遺品整理サービスを利用するという選択肢もあります。遺品整理サービスの具体的な内容は業者によって変わりますが、遺品整理専門業者の中には以下のようなサービスを提供しているところがあります。

・貴重品、処分品の仕分け
・遺品の買取
・遺品の供養
・重要書類、貴重品の探索
・処分品への対応
・形見分け品の配送
・遺品の梱包
・搬出時の養生
・生前整理
・ハウスクリーニング
・特殊清掃
・リフォーム
・不動産整理などの各種手続き


詳細は遺品整理業者って結局何してくれるの?サービス内容を網羅的に解説を参照。

このように業者によっては至れり尽くせりのサービスを提供しているところもあるため、遠方に住んでいるような人でも一度現場に立ち会うだけで遺品整理を終わらせるということも可能です。

信頼感のある男性

「大切な遺品を他人に任せるなんて……」と思う人もいるかもしれませんが、近年は業界全体でサービスの改善が進められており、依頼者の感情面のケアに力を入れている業者も増えてきています。遺品を雑に扱ったり、貴重品を盗難したりしないことを証明するために、依頼者の現場立会いを原則としている業者もあります。

もちろんそうしたサービスレベルの高い業者は料金が高い場合もありますが、それを適正価格とするかどうかは依頼者側の考え方次第です。ただシンプルに遺品を片付けて欲しいだけであれば、そこまでのサービスレベルは必要ありませんから、安く済ませることもできるかもしれません。

一方で自分の分まで故人の遺品を丁寧に扱って欲しいということであれば、相応の料金を支払ってでもサービスレベルの高い業者を選ぶ価値があるでしょう。

どのような考え方で業者を選べばいいかについては遺品整理業者選びのチェックポイント!高い業者と安い業者の違いとは?で詳しく説明しています。こちらも合わせて参考にしてください。

まとめ

遺品の整理ってつい感情的になりそうだけど、それだけじゃダメなんだなあ……。
いざその場面になったら感情的になっちゃうだろうから、あらかじめ考えておきたいね。
そうだね。親本人にどんな形がいいか聞いておくのもいいかも。
確かに。それならいざという時に迷いなく決断できるもんね。

2018年時点の日本の状況を考えると、大半の人がいずれは遺品とどう向き合うのかという問題に直面するはずです。その際に必要以上に時間やお金をかけてしまったり、慌てて対応して後悔しないために、今のうちから遺品整理にどう対応するかを考えておきましょう。