廃プラスチックは今、リサイクルして有効活用できることで注目が集まっています。
プラスチックの処分や廃プラスチックのリサイクルの流れについてご紹介いたします。

プラスチックのリサイクル率は上昇傾向にある

まずは、廃プラスチックのリサイクル率を見てみましょう。廃プラスチックのリサイクル率に変動はあるものの基本的には高く、2014年から2015年にかけては若干ではありますが上昇しています。
一般家庭の分別や廃プラスチックのリサイクルへの知識の浸透や、リサイクル技術の発展もあり、今後もますますリサイクル率が上がることが期待されます。

廃プラスチックの内訳は「ペットボトル」が最も多い

一口に廃プラスチックと言ってもその内訳は様々です。
飲み物を入れるペットボトル、食品や調味料を入れるチューブやパック、トレイ、スーパーの袋やゴミ袋、ラップ、フィルムなどなど…。

中でも、環境省が発表した容器包装廃棄物の使用・排出実態調査では、ペットボトルの使用料、排出量は17.1%とかなり多くの割合を占めています。その他は容器包装以外のプラスチックが18.1%、発泡スチロールトレイが1.9%、その他の容器包装が62.9%となっています。
この多くの割合を占めるペットボトルを、いかにリサイクルして有効活用するかが重要ですね。

プラスチックのままリサイクルを行うマテリアルリサイクル

廃プラスチックのリサイクル方法には、大きくわけて3種類あります。

  1. マテリアルリサイクル
  2. ケミカルリサイクル
  3. サーマルリサイクル

です。

この3つのリサイクル方法について、詳しくご紹介します。

家庭から出る廃プラスチックもマテリアルリサイクルで製品に生まれ変わる

まずはマテリアルリサイクルから。マテリアルリサイクルは、回収した廃プラスチックをプラスチックのまま新しいアイテムに作り変えるというリサイクル方法です。1970年代ごろから登場し、現在では多数のアイテムがこのマテリアルリサイクルによって生み出されています。
かつては汚れが少なく樹脂の種類が明確になっている産業系の廃プラスチックがリサイクル対象でしたが、近年は家庭から出る廃プラスチックもマテリアルリサイクルによって活用されるようになりました。

マテリアルリサイクルの流れ

マテリアルリサイクルは、まず家庭での「分別」が重要です。ペットボトルならラベルを外し、中身をキレイに洗って蓋をせずゴミに出します。
収集された廃プラスチックは市町村の施設で選別されます。キレイでリサイクルできる状態のものだけを集め、圧縮して保管します。

圧縮された廃プラスチックは事業者が回収して再商品化。この間、塩ビボトルの除去、着色ボトルの除去、手で選別を行ったあと粉砕、風力分離、洗浄、比重分離を行います。
廃プラスチックを8mm程度に粉砕したフレークは、再度ペットボトルとして活用されたり、食品用トレイやラベル、カード、文房具、衣類、その他ボトルや容器と幅広くリサイクルされます。

以前はリサイクルした廃プラスチックは衛生面の観点から飲料用のペットボトルには使用できませんでしたが、2003年より新たな技術が生まれ、飲料用のペットボトルとしても再利用されるようになりました。

このフレークをさらに加熱処理しより細かくしたペレットは、食品用トレイ、衣類、その他容器など、ペットボトル以外のリサイクルに使用されます。

化学反応を起こして再利用するケミカルリサイクル

次にケミカルリサイクルについてご紹介します。ケミカルリサイクルは、廃プラスチックに化学反応を与えて組成を変換し、リサイクルするというものです。マテリアルリサイクルのように目に見える形でリサイクルされるのではなく、燃料などとして使われることが多いです。

このケミカルリサイクルはさらに以下の4つに分類されます。

1. 油化
2. 高炉原料化
3. コークス炉化学原料化
4. ガス化

です。

これらについてより詳しく見ていきましょう。

廃プラスチックを油に戻す「油化」

まずは油化。プラスチックはもともと石油から作られています。そのため製造の工程と逆の工程を行うことで、油に戻すという仕組みです。しかしポリエチレンやポリプロピレンといった廃プラスチックは良質な油になるものの、塩化ビニルが混ざっている場合はうまくいきません。この選別にも、非常にコストがかかってしまいます。

他にも廃プラスチックを溶かす段階で電力が必要になったり、製品化のための工程が増えたり、発火や爆発の危険性も高いことから現在ではあまり活用されていません。

鉄を作るために行われる「高炉原料化」

次に高炉原料化をご紹介します。後に紹介するコークスの代わりの還元剤として製鉄所などで再利用するという高炉原料化。廃プラスチックを回収し、選別などの前処理を行ったあと塩化ビニル選別機でふるいにかけ、還元剤にリサイクルします。
これは製鉄所で鉄を作る際に活用されます。鉄の製造の際に出た高炉ガスはさらに発電利用もできます。

発電や高炉に使用できる「コークス炉化学原料化」

廃プラスチックは石炭と同様に、蒸し焼きにするとコークス、炭化水素油、コークス炉ガスができます。これらは化成工場、高炉、発電などに利用できます。処理の過程で有害物質が出ないことも特徴的です。
家庭から出た廃プラスチックを回収し、前処理を行ったあと滅容器で処理します。コークス炉に入れると、炭化水素油が40%、コークスが20%、コークス炉ガスが40%の割合で出来上がります。

廃プラスチックを分子レベルまで分解する「ガス化」

最後に紹介するのがガス化です。廃プラスチックを分子レベルにまで分解し、他の化合物として利用します。プラスチックの主な成分は炭素と水素ですので、普通に燃やすと二酸化炭素と水になってしまいます。しかしガス化では酸素と蒸気を与えて加熱。結果的に炭化水素、一酸化炭素、水素が出来上がります。

ガス化までは低温ガス化炉、高温ガス化炉、ガス洗浄設備、CO転化設備、脱硫設備の流れを踏んでいきます。

焼却した際の熱エネルギーを利用するサーマルリサイクル

サーマルリサイクルは
1. 火格子焼却炉
2. 流動床焼却炉
3. ガス化溶融炉

の3つで行われます。

サーマルリサイクルは、廃プラスチックをただ焼却処分するだけでなく、その際に出た熱のエネルギーをリサイクルするというものです。廃プラスチックの中でもリサイクルにコストがかかるものやマテリアルリサイクルなどで利用できない廃プラスチックに対して行われます。

過去、廃プラスチックを焼却する際にダイオキシンが発生することが懸念されていましたが、現代ではダイオキシンを発生させない方法が生まれ、このサーマルリサイクルもよく活用されるようになりました。

「火格子焼却炉」でのサーマルリサイクルの流れ

その中の火格子焼却炉では、廃プラスチックを移動させながら行うもので、乾燥、燃焼、後燃焼の3段階に分けて焼却します。その際に出た排ガスを再利用していきます。

「流動床焼却炉」でのサーマルリサイクルの流れ

流動床焼却炉では、加熱した壺のような機械の中に廃プラスチックを入れて焼却させる方法が取られています。この壺の中には熱い砂と空気が継続的に送り込まれており、廃プラスチックを加熱し続けることが可能です。

「ガス化溶融炉」でのサーマルリサイクルの流れ

ガス化溶融炉では廃プラスチックを加熱してガス化し、その際に発生した熱や炭化物を回収して再利用するという仕組みです。途中までは流動床焼却炉と同じように熱い砂と空気の入った焼却炉で処理しますが、その後加熱性ガスチャーで運ばれ、排ガスやスラグに分解されていきます。