リサイクルショップを営んでいれば、誰しもがより多く販売したいと考え、より多く買取したいと考えるはずです。しかし、当然ですが、そのためにどんな手段を使ってもいいというわけではありません。押し売りは刑法の強要罪に当てはまりますし、押し買いは不用品回収業者・出張買取業者が「押し買い」と誤解されないための4つのルールでも紹介したように特定商取引法違反となります。
こうした法律で規制されているものの一つに、販売促進(以下、販促)があります。販促方法にもルールが定められており、それを破ると行政からの措置命令や懲役刑・罰金刑が課せられる可能性があるのです。
ここでは違法になる危険がある販促方法を紹介するとともに、販促のルールを定める景品表示法の概要を解説。どのような販促であれば法令を遵守していることになるのかについても解説します。
違法になる危険がある販促方法
下表は実際にリサイクルショップで行われる可能性がある販促方法で、かつ違法性が問われる可能性が高いものとその具体例をまとめたものです。
仕入先から聞いた誤情報を販促に使う | 生産国や原材料等の誤情報を、そうとは知らずに発信する、など |
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修復歴や傷を意図的に隠す | 楽器や食器類の修復歴、家具の傷などを隠したまま販売する、など |
売約済み商品を広告に使う | すでに売約済みの商品であるにもかかわらず、写真などをチラシやHPに販促目的で掲載する、など |
わざと高めの値段をつけてから値引きして安く見せる | もともと5,000円程度の価値しかないものを「通常価格12,000円」などとして高く見せておき、5,000円で販売することで安く見せる、など |
割引の条件などをわかりにくく表示する | 「現品限り」「処分品」「訳あり品」などの割引の条件を、よく見ないとわからないような小さな字で表示する、など |
「修復歴や傷を意図的に隠す」「わざと高めの値段をつけてから値引きして安く見せる」といった行為は明らかにお客様を騙そうという意図が感じられますが、それ以外のものはうっかりすると知らない間に行ってしまう可能性もあります。
例えば「仕入先から聞いた誤情報を販促に使う」は、相手が信頼のできる取引先であるほど知らずに行ってしまう可能性も高くなるでしょうし、「売約済み商品を広告に使う」も売れてしまったのをしらないまま掲載を続ければ該当する可能性があります。「割引の条件などをわかりにくく表示する」もリサイクルショップ側から見れば問題のない表示でも、客観的に見れば見にくかったというケースも考えられます。
初めからルールを知っておけば、そうした「うっかり」は未然に防ぐことができます。だからこそ、販促をする際はどのような行為が違法になり得るのかをあらかじめ知っておく必要があるのです。
景品表示法とは?
消費者を守るための法律
消費者を守るための法律には消費者保護法を始め、特定商取引法など様々な法律があります。そのうちの一つが消費者が誤認する可能性の高い「不当な表示」を禁止する景品表示法です。
商品やサービスの品質や価格についての情報は、消費者がそれらを購入するかどうかの非常に重要な判断要素です。これが正しく消費者に伝わらない場合、消費者にとっての損害につながる可能性があります。景品表示法は、そのような事態を防ぐために定められているのです。
リサイクルショップが注意するべき「不当な表示」
では景品表示法が定める「不当な表示」にはどのようなものが挙げられているのでしょうか。メインとなるのは優良誤認表示と有利誤認表示と呼ばれるものですが、これとは別に「商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示」(景品表示法第5条第3項)として6つの表示方法が挙げられています。
以下ではこの優良誤認表示と有利誤認表示に加え、特にリサイクルショップに関連すると思われる2つの表示方法について解説します。
優良誤認表示
商品・サービスの品質や規格などについて、事実と異なる内容を表示することを優良誤認表示と呼びます。つまりは商品・サービスを必要以上によく見せようとする販促です。例えばパイン材の家具をオーク材として販売するといった場合に、優良誤認表示が適用されます。
有利誤認表示
商品・サービスの価格や取引条件について、事実と異なる内容を表示することを有利誤認表示と呼びます。簡単に言えば必要以上にお得だと思わせる内容を表示する販促が有利誤認表示に当てはまります。例えば根拠なく「一般市場価格○○○○円!」などと表示して、自店の価格の安さをPRしたような場合に、有利誤認表示として違法になる可能性があります。
商品の原産国に関する不当な表示
その商品がどこの国で生産されたものかどうかを偽って表示した場合に、商品の原産国に関する不当な表示に該当します。この表示については国以外にも事業者やデザイナーの名前、商標などに関しても適用されます。例えば「MADE IN ○○○」といった刻印がない中国製の家具を日本製としてPOPをつけたような場合に、違法性が問われます。
おとり広告に関する表示
商品・サービスが購入できないにも関わらず、購入できるような表示をすることをおとり広告と呼びます。例えばまだ仕入れていない商品をあたかも購入できるかのように表示した場合や、すでに売約済みの商品を購入できるかのように表示した場合などが当てはまります。
違法にならない販促方法を実践しよう!
下表はここまで見てきた「不当な表示」にならないようにするための、販促方法の実践例です。
販促に使う情報は正確性を重視する | メーカーが公表している情報を使う、POPなどには使わず口頭で「おそらく〜だと思われる」というように伝える、など |
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修復歴や傷はPOPなどに明記する | 赤字で表記する、「細かい傷などは見逃している可能性もある」といった内容を併記する、など |
根拠のある宣伝文を使う | 「どこよりも高く買い取ります」などはその基準などを明記するか、説明できるようにしておく、など |
割引の条件などは大きく、見やすい場所に記載する | 赤字で表記する、POPで大きく表示する、など |
割引をする際は「8週間ルール」にしたがう | 直近の販売期間8週間のうち、半分以上の期間に表示されていた価格を「通常価格」とする、など |
売約済み商品は広告に使わない | 写真などに「売約済み」の表示をして、広告として使わないようにする、など |
「根拠のある宣伝文を使う」についてですが、実は景品表示法には、買取促進についてのルールは定められていません。そもそも景品表示法に限らず、買取促進のための広告については法的なルールが存在しないのです。
しかしルールがないからといって、何を言ってもいいというわけではありません。例えば根拠なく「どこよりも高く買い取ります!」といった宣伝文句を使えば、消費者の有利誤認を引き起こす可能性があります。こうした行為は回り回って消費者からのクレームや競合からのクレームにもつながりかねません。そのような事態にならないためにも、販売・買取問わず、根拠のある宣伝文を使うようにしましょう。
また通常価格と割引価格を一緒に表示して安さを演出する際は、8週間ルールを守る必要があります。これについては消費者庁が「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」という文書の中で、公式の解釈を公表しています。この解釈にしたがえば、通常価格を割引価格を一緒に表示する場合は、次のルールを守らなければなりません。
・直近の販売期間8週間のうち、半分以上の期間に表示されていた価格を「通常価格」として表示できる。
・販売開始から2週間経っていない場合、または「通常価格」で販売された最後の日から2週間以上経っている場合は、その価格を「通常価格」として表示できない。
安さを演出するためだけに通常価格と割引価格を一緒に表示することのないよう、くれぐれも注意しましょう。
まとめ
自店の商品が売れてほしい、自店にもっと買取品を持ち込んでほしいと思うのは、商売をしている以上当たり前のことです。しかしその際の販促活動は、あくまで景品表示法というルールに則ったものでなければなりません。
ここで解説したポイントを踏まえた上で、法令を遵守した営業をするよう心がけましょう。