ゾウ

リサイクルショップなどを営む場合、ブランドバッグやブランド服、高級家具や楽器などの商品の中には、海外からの輸入品という形で仕入れる品物もあるのではないでしょうか。また国内で仕入れた品物を、近年拡大しているルートに乗せて輸出するという場合もあるでしょう。

しかしそこには思わぬ落とし穴があることを忘れてはいけません。その落とし穴とはワシントン条約です。ここではリサイクル業者がリユース品の輸出入を行う際に、注意するべきワシントン条約への対応について解説します。

INDEX
  1. 知らない間にワシントン条約に抵触していませんか?
    1. 輸出品・輸入品に紛れる禁止品目
    2. ワシントン条約関連の罰則
    3. 輸出入を行うならワシントン条約を理解しておくべき
  2. ワシントン条約が定める主な禁止品目
    1. 禁止品目を定める3つの「附属書」
    2. 結局何をチェックすればいいの?
    3. 手続きをすれば商業的輸出入も可能
  3. 「委託」や「取り扱わない」も選択肢
    1. 商業的輸出入には手間も時間もかかる
    2. 効率的に輸出入を行うなら
  4. まとめ

知らない間にワシントン条約に抵触していませんか?

輸出品・輸入品に紛れる禁止品目

象牙やべっこうをはじめとして、ワニ革やヘビ革といったエキゾチックレザーといった動物性素材のもの、そのほかローズウッドやブラジリアン・ローズウッドなどの植物性素材のもの……輸出入品にはそうしたワシントン条約で無許可での商業的輸出入が禁止されている品目が、様々な形で紛れています。

例えば象牙は三味線のバチや高級掛け軸、ピアノの鍵盤などに使われていますし、ローズウッドやブラジリアン・ローズウッドは高級家具や楽器、木人形などの材料として使われている場合があります。

ワシントン条約関連の罰則

投獄された男性

これらの禁止品目が使われていることを知らずに輸出入してしまえば、ワシントン条約に基づく国内法、日本の場合は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」で定められている罰則が課せられる可能性があります。

例えば禁止品目に該当する物をルールに従わずに輸入したり、受け取ったことが発覚し、それを返送するよう行政から命令があったにもかかわらず、この命令を無視した場合は、懲役1年以下または100万円以下の罰金の罪になります。

あるいは同法で希少野生動物種に該当する物を陳列していた場合で、行政から改善命令があった場合、これを無視するなどして命令に違反すると懲役6ヶ月以下または50万円以下の罰金の罪に問われます。

同法にはこの他にも様々な罰則が設けられており、罰則自体も上記の2種類以外に、50万円以下の罰金、30万円以下の罰金が設けられています。

輸出入を行うならワシントン条約を理解しておくべき

ワシントン条約について知識がないまま輸出入を続けていると、こうした罰則の対象になるリスクも高くなってしまいます。したがって、絶滅危惧種の適切な取扱を行うとともに、法的な罪に問われるリスクを抑えるためには、ワシントン条約の基本を理解しておく必要があるのです。

ワシントン条約が定める主な禁止品目

禁止品目を定める3つの「附属書」

リスト

では具体的にワシントン条約ではどのような品目の輸出入を禁止しているのでしょうか。これについては同条約を構成するI〜IIIの附属書で定められています。それぞれの掲載基準や主な掲載種は以下の通りです。

附属書I 附属書II 附属書III
掲載基準 絶滅のおそれのある種で、取引により影響を受けるもの 現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引を厳重に規制しなければ絶滅のおそれのある種となりうるもの 締約国が自国内の保護のため、他の締約国の協力を必要とするもの
掲載種の例 オオカミ、ジャイアントパンダ、ブラジリアン・ローズウッド、牡丹属全種など フェネックギツネ、ネコ科全種、サボテン科全種、チョウセンニンジンなど ハクビシン(インド)、インドクジャク(パキスタン)、モンゴリナラ(ロシア連邦)、オオミヤシ(セーシェル)など
輸出入規制の内容 ・商業目的のための国際取引を禁止
・学術目的(繁殖目的を含む)の取引は可能だが、輸出国、輸入国双方の政府の発行する許可書が必要
・商業目的の国際取引は可能
・輸出国政府の発行する輸出許可証が必要(附属書IIIの場合は指定国以外は原産地証明が必要)
輸出入許可の条件 取引およびその目的が種の存続を脅かすものでないこと 取引が種の存続を脅かすものでないこと
・違法に入手したものではないこと
・適切な輸送方法、収容施設(生体の場合)

<参考>
環境省リーフレット
経済産業省(動物に関する附属書)
経済産業省(植物に関する附属書)

結局何をチェックすればいいの?

禁止品目については上表の参考にあげた動物・植物それぞれの附属書を見れば確認することができます。しかし附属書にリストアップされている禁止品目は非常に多く、輸出入の都度確認していては途方も無い時間がかかってしまいます。そのため、まずは下表の品目に特に注意してチェックを行うことから始めていきましょう。

禁止品目 よく使用されている商品 附属書
ローズウッド ギターなどの楽器類 附属書II
ブラジリアン・ローズウッド 高級家具 附属書I
エキゾチックレザー 高級バッグ、時計のベルト 附属書II
ローズウッド 木彫りの人形 附属書II
象牙 三味線、掛け軸、ピアノ 附属書I

手続きをすれば商業的輸出入も可能

掲載基準や掲載種を紹介した最初の表にもあるように、ワシントン条約の禁止品目はどのような状況においても輸出入が禁止されているわけではありません。掲載されている附属書に基づいた所定の手続きを踏んで、かつ許可が得られれば、商業目的でも輸出入を行うことは可能です。

この際の手続きは輸入・輸出ごとに必要な書類が分かれており、さらに附属書ごとに必要な書類が分かれます。

「委託」や「取り扱わない」も選択肢

商業的輸出入には手間も時間もかかる

山積みの書類に途方に暮れる男性

しかし許可さえられれば輸出入できるからといって、その手続きが簡単に行えるというわけではありません。例えば輸出申請は売る側が行うことになりますが、時間や費用は各国で変わるものの、日本の場合は1週間〜3週間程度の時間が必要になります。国によっては丸1ヶ月かかるというケースもあります。

しかも許可の期限は原則半年となっており、その期間内に取引を終えなければなりません。この期間も国によって差があり、半年よりも短く設定している国もあります。

またたとえ継続的に同じ品目を同じ相手と取引していたとしても、日本の場合はその都度手続きが必要になるため、毎回の取引で同じ時間と手間が必要です。確かに禁止品目が使用されているようなリユース品は中古であっても高値がつきやすいのも事実です。しかしそれには相応の手間と時間がかかるのです。

効率的に輸出入を行うなら

人手や人件費の問題が発生しないのであれば、輸出入のために手間や時間をかけてもいいでしょう。しかしそうではない場合で、こうした時間と手間のことを考慮に入れると、効率的な輸出入のためには専門の業者に間に入ってもらって販売委託・買付委託という形をとるのが賢明だと言えるでしょう。

またもしこれからワシントン条約の附属書に関わるような商品を取り扱おうとしている場合は、それによって拡大できる売上や利益と、取り扱うために必要な手間や時間を天秤にかけて、「取り扱わない」という決断を下すことも選択肢の一つです。

まとめ

現時点で、ワシントン条約の禁止品目に関わる商品を取り扱っているリサイクル業者は、輸入・輸出時以外にも、海外旅行者に販売するときにも十分注意する必要があります。また手続きに必要以上の時間や手間をかけている場合は、痛くも視野に入れて、業務のスリム化を図っていきましょう。

また今後取り扱いを検討しているリサイクル業者に関しては、「取り扱わない」という選択肢も視野に入れて、自社にとって最も適した決断を下すようにしましょう。