ペットボトルの再生フレーク

これまで日本では、もともと廃棄物として処理されるべきものを加工して再利用し、別の商品として販売するという手法がいくつも試されてきました。その手法から生まれた画期的な事業や商品も少なくありません。

しかしこの手法は、一歩間違えると廃棄物処理法に抵触する可能性があります。不用品回収業者が知っておきたい廃棄物処理法の重要判例集その1で紹介したおから裁判はその代表例で、おからを加工して肥料・飼料を作っていた被告人は無許可営業として裁かれています。

一方で不用品回収業者が知っておきたい廃棄物処理法の重要判例集その2で紹介した水戸木くず裁判の第一審では、木くずの加工は廃棄物処理法上問題ないとされています。

おからはダメでも、木くずはOK……ではペットボトルを洗浄して細かく砕いた再生フレークを加工する事業は、廃棄物処理法上どう扱われるのでしょうか。ここではJRITSに寄せられた質問をきっかけとして、ペットボトルの再生フレークを加工するには許可が必要なのかについて考えます。

INDEX
  1. ペットボトルの再生フレークを加工するには許可が必要か?
    1. 再生フレークは「古物」ではない
    2. 許可の必要性は廃棄物処理法から考える
  2. お金を出して仕入れているか否かが最も重要
    1. お金を出して仕入れているか否か
    2. 処理料金などをもらって引き取っている場合について
  3. まとめ

ペットボトルの再生フレークを加工するには許可が必要か?

先日私たちJRITS(一般社団法人日本リサイクル業IT支援協会)の問い合わせフォームから、以下のような質問が届きました。

1.ペットボトルを粉砕して洗浄したものは古物に当たるか?
2.ペットボトルを粉砕して洗浄したものを取り扱うのにライセンスは必要か?

再生フレークは「古物」ではない

1は古物営業法に関する質問です。古物営業法施工規則第2条第1項によれば、古物営業法における「古物」とは以下の13品目を指します。

一 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
二 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)
三 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)
四 自動車(その部分品を含む。)
五 自動二輪車及び原動機付自転車(これらの部分品を含む。)
六 自転車類(その部分品を含む。)
七 写真機類(写真機、光学器等)
八 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)
九 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)
十 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等)
十一 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)
十二 書籍
十三 金券類(商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令(平成七年政令第三百二十六号)第一条各号に規定する証票その他の物をいう。)
引用元: 古物営業法施工規則

この中にはペットボトルを粉砕して洗浄したもの(以下、ペットボトルの再生フレーク)は含まれていません。したがって、ペットボトルの再生フレークは古物ではないということができます。

ちなみにイオングループや大丸松坂屋の各店舗などで行われているエコキャップ運動で集められているペットボトルのキャップも古物には該当しません。

許可の必要性は廃棄物処理法から考える

2に関しては、廃棄物処理法に関する質問として考えることができます。その根拠は2つあります。

一つはペットボトルの再生フレークが古物でないとしたら、再生フレークの買取や加工品の販売には古物商許可は不要だということになるため、古物営業法の範疇ではないからです。

もう一つは本来資源ごみ(廃棄物)として処理されるペットボトルをもとに作られている再生フレークを扱うのであれば、おから裁判のおからや水戸木くず裁判の木くずと同様、それが廃棄物として扱われているのか、有価物として扱われているのかが法律上のポイントとなるからです。そしてこの法律こそが、廃棄物処理法なのです。

お金を出して仕入れているか否かが最も重要

お金を払っているイラスト

では廃棄物処理法に照らして考えた場合、ペットボトルの再生フレークは廃棄物と見なされるのでしょうか、あるいは有価物として見なされるのでしょうか。これを考えるにあたっては、以下の2点が論点となります。

・お金を出して仕入れているのか、処理料金などをもらって引き取っているのか?
・後者の場合、取引内容は総合判断説の基準をクリアできるか?

お金を出して仕入れているか否か

最も重要な論点はお金を出して仕入れているか否かです。このうちお金を出して仕入れている場合、さらに2つのケースに分かれます。すなわち手元プラスのケースと手元マイナスのケースです。

手元プラスとは、ペットボトルの再生フレークの販売元が再生フレークの販売により利益を得ている状態を指します。この場合再生フレークは通常の商品と同様に有価物として取引されているとみなされるため、これを加工・販売する側は廃棄物処理法上の許可を取得しなくてもよいことになります。

手元マイナスとは、ペットボトルの再生フレークの販売元が再生フレークを有償で販売していても、運送費などのコストを加味すると損をしてしまう状態を指します。このようなケースでは、販売元が費用を負担して仕入先に納品していると考えることもできます。

これを仮に「費用を負担して引き取ってもらっているのだから、再生フレークは廃棄物のようなものだ」と解釈すれば、廃棄物処理法上の許可を取得しなければならなくなります。

指示棒を持っているメガネの女性

しかし行政の解釈は違います。今回のケースのように加工・販売する前提で仕入先に納品された場合は、仕入先に納品された時点で再生フレークは有価物だとみなされるのです。したがって手元マイナスでも、少なくとも仕入れた側には廃棄物処理法上の許可は必要ありません。すなわちお金を出して仕入れている限りは、再生フレークの加工には許可は必要ないと言うことができます。

なお手元マイナスの際の廃棄物と有価物の考え方については、「お金をもらって回収した=廃棄物」ではない?不用品回収業者必読の「手元マイナス通知」徹底解説でも詳しく解説していますので、もっと詳しく理解したいという人はこちらを参照してください。

処理料金などをもらって引き取っている場合について

一方で処理料金などをもらって引き取っているとなると、廃棄物処理法上はグレイゾーンに入ってしまいます。なぜならこの場合、再生フレークはお金を払ってでも引き取ってもらいたいもの、お金をもらわなければ引き取れないものという位置付けになるからです。

この位置付けは廃棄物としての要素が強いため、再生フレークを加工するという事業が廃棄物処理業であるとみなされ、廃棄物処理業許可の取得が必要になる可能性があります。

「判決」と書かれている紙

とはいえ再生フレークが確実に廃棄物としてみなされるかというと、そういうわけではありません。例えば水戸木くず裁判は、処理料金を受け取っていた破砕業者が、産業廃棄物処理業許可を取得せずに木くずの加工を行っていたため、無許可営業として摘発された裁判です。

しかし第一審では、この木くずは有価物であると判断され、無許可営業の指摘は取り下げられています。このように処理料金などをもらって引き取っている場合でも、状況次第では有価物とみなされる可能性もあり得るのです。

ではどうすればペットボトルの再生フレークを処理料金などをもらって引き取って加工する事業が、廃棄物処理法上で違法なのか適法なのかを判断できるのでしょうか。

この点についてJRITSとして東京都環境局に問い合わせたところ、「そのようなケースの場合、違法になるか適法になるかは裁判にならないとわからないというのが実情です」との回答を得ました。いわば廃棄物処理業許可を取得せずにこの事業を行うのは、違法か適法かのギャンブルをするようなものというわけです。

このように考えると、ペットボトルの再生フレークを加工・販売する事業を始める際は、原材料となる再生フレークはお金を払って仕入れるのが安全な方法だと言えるでしょう。

まとめ

おからでも、木くずでも、ペットボトルの再生フレークでも、最も重要なのはそれが有価物なのか廃棄物なのかという判断です。もし有価物として認められるのであれば、取得の難しい各種処分業許可は必要ありません。

しかし認められなければ許可を取得するか、さもなければ無許可営業として裁かれるリスクを冒すことになります。そのため各種処分業許可を取得しないもしくはできない場合は、有価物として取引することを念頭に置いて、事業をスタートさせるようにしましょう。