これは産業廃棄物?それとも一般廃棄物?
不用品回収業者として営業を始めようと思い立ったとき、基本中の基本として理解しておかなくてはならないことがあります。それは「産業廃棄物とは何か?」「一般廃棄物とは何か?」です。

「不用品を取り扱うのだから、廃棄物については知らなくてもいい」というわけにはいきません。不用品と廃棄物は法律上かなり近いところにあるため、廃棄物についての理解が不十分だと、場合によっては違法な業者と見なされてしまう可能性もあります。そのような事態を避けるためにも、ここで「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の定義や違いについてしっかりと理解しておきましょう.

INDEX
  1. 「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の定義
    1. まずは「廃棄物」とは何かを理解しよう
    2. 「産業廃棄物」は事業活動から出た20種類のゴミ
    3. 「一般廃棄物」は産業廃棄物以外のゴミ
    4. 「特別管理廃棄物」について
    5.  産業廃棄物と一般廃棄物の違いを見分けよう
  2. なぜ廃棄物の収集には「許可」が必要なのか?
    1. 廃棄物を収集するには許可が必要!
    2. なぜ許可がないと収集してはいけないのか?
    3. 今の法律は「完璧」ではない
    4. その「回収」は合法ですか?違法ですか?

「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の定義

まずは「廃棄物」とは何かを理解しよう

そもそも廃棄物とは何でしょうか?「ゴミ」という答えも正解ですが、実はそれほど単純なものでもありません。日本の法律上、廃棄物は以下のように分類されています。


それぞれの廃棄物を簡単に説明すると以下の表のようになります。

廃棄物の名称
概要
産業廃棄物 事業活動によって出るゴミのうち、廃棄物処理法に定められた20種類のゴミ
特別管理産業廃棄物 産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性のあるゴミ
一般廃棄物 産業廃棄物以外のゴミ
家庭系一般廃棄物 一般家庭の日常生活から出るゴミ
事業系一般廃棄物 産業廃棄物以外のゴミのうち、事業活動によって出るゴミ
特別管理一般廃棄物 一般廃棄物のうち、適切に処理をしないと危険性のあるゴミ

ポイントになるのは「何から出たゴミなのか?」です。以下では大きく「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分けて、それぞれの定義や具体例を解説していきます。

「産業廃棄物」は事業活動から出た20種類のゴミ

産業廃棄物を定義するのは「事業活動から出たゴミである」という点と、「廃棄物処理法で定められた20種類のゴミに該当する」という点です。

事業活動とはすなわち事務所やお店、飲食店や工場のほか、病院や学校、老人ホームなどの社会福祉施設が行なっている事業を指します。つまり自分の会社やお店の利益を追求する目的の事業であろうと、公共の利益のための事業であろうと、何かしらの事業を運営することで出るゴミは産業廃棄物になるというわけです。

ただし、このうち実際に産業廃棄物になるのは、以下の20種類のゴミに該当するかどうかで決まります。

 

ゴミの種類
具体例
燃え殻 石灰がら、焼却炉の残灰など
汚泥 排水処理などによって排出された泥状のもの、洗車場汚泥や建設汚泥など
廃油 鉱物性油や動植物性油、潤滑油など
廃酸 写真定着廃液、廃塩酸など
廃アルカリ 写真現像廃液、金属石鹸廃液など
廃プラスチック類 合成樹脂くず、廃タイヤを含む合成ゴムくずなど
ゴムくず 生ゴム、天然ゴムくず
(合成ゴムは廃プラスチック類)
金属くず 鉄鋼または非鉄金属の破片、研磨くずなど
ガラスくず、コンクリートくず、陶器くず ガラス類、コンクリート類から出たくず
鉱さい 鋳物廃砂、不良石灰など
がれき類 建物等の新築や改築などで出たコンクリート破片など
ばいじん 産業廃棄物焼却施設で発生するばいじんのうち、集じん施設に集められたもの
紙くず 建設業やパルプ製造業など、紙に関する事業活動から出る紙くず
木くず 建設業や木材製造業など、木材に関する事業活動から出る木くず
繊維くず 建設業のほか、衣服その他繊維製品製造業以外の繊維工業の事業活動から出る繊維くず
動物性残さ 食料品や医薬品などの製造業の事業活動から出る動物の固形状の不要物
動物系固形不要物 と畜場で処分した動物に関係する固形状の不要物
動物のふん尿 畜産農業の事業活動から出る動物のふん尿
動物の死体 畜産農業の事業活動から出る動物の死体
以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので上記の19種類に該当しないもの 19種類に該当するものをコンクリート固めにしたものなど

参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター

 

この一覧にしたがえば、例えば製紙会社が製品の製造をするときに出た紙ゴミを捨てようとすると産業廃棄物として処理しなければなりませんが、家電量販店が業務中に出たメモを紙ゴミとして捨てるときは産業廃棄物として処理する必要はない、ということになります。

「一般廃棄物」は産業廃棄物以外のゴミ

一般廃棄物の定義は「産業廃棄物以外」とシンプルですが、一般廃棄物は「何から出たか?」で「家庭系一般廃棄物」と「事業系一般廃棄物」に分けられます。

家庭系一般廃棄物は、一般家庭が日常的に生活を送るときに出るゴミを指します。そのため先ほど産業廃棄物のところで挙げた20種類のゴミに該当したとしても、それが一般家庭の日常生活から出たものであれば家庭系一般廃棄物として処理します。
例えば割れたコップ(ガラスくず)や、着古したTシャツ(繊維くず)、ペットのオシッコやウンチ(動物のふん尿)などです。もちろん地域のルールにしたがって捨てなければなりませんが、産業廃棄物として処理する必要はありません。

事業系一般廃棄物は、事業活動から出たゴミのうち産業廃棄物以外のゴミを指します。例えば前述した「家電量販店が業務中に出たメモを紙ゴミとして捨てるとき」は、事業系一般廃棄物として処理します。ただ注意しなければならないのは、事業系一般廃棄物は家庭系一般廃棄物のように市区町村によって回収してもらえないという点です。
なぜなら事業系一般廃棄物は産業廃棄物とともに「事業系ごみ」として分類されており、そのゴミを出した事業者が自己責任で処理するか、もしくは適切な業者に委託する責任が法律で定められているからです。

そのため、仮にオフィスで出た大量の段ボールを社員が自宅で家庭系一般廃棄物として捨てたり、あるいは料金が安いからと不適切な業者(無許可業者、許可については後述)に丸投げしてしまうと、法律に基づいて罰を受けることになります。

「特別管理廃棄物」について

特別管理産業廃棄物と特別管理一般廃棄物はそれぞれ、環境や人の健康に危険のある産業廃棄物と一般廃棄物を指します。
例えば廃油の中でも、揮発油類や灯油類などは産業廃棄物ではなく特別管理産業廃棄物として処理する必要があります。あるいはエアコンやテレビ、レンジなどの廃家電製品の部品のうち、絶縁油に高濃度のポリ塩化ビフェニル(PCB)を使用した部品*については、特別管理一般廃棄物に適した処理をしなければなりません。

こうした特別管理廃棄物の処理には特別に基準が定められており、通常の廃棄物よりも規制が厳しくなっています。「これはどっちだろう?」と判断の難しいものは環境省のこちらのページを参照するなどして、確実に取り扱うようにしましょう。

※PCBは昭和47年に製造・使用が禁止されています。現在PCB部品が使われている製品は、それ以前に製造されたものだけです。

 産業廃棄物と一般廃棄物の違いを見分けよう

ここまで産業廃棄物と一般廃棄物について解説してきました。ここで両者を見分ける際のポイントをまとめておきましょう。

なぜ廃棄物の収集には「許可」が必要なのか?

許可の必要性とは?

どの種類のゴミにせよ、営利目的で収集するのであれば市町村もしくは都道府県の許可を得る必要があります。以下ではどのようなゴミについてどのような許可が必要になるのかを簡単に解説するとともに、「なぜ許可がなければ収集してはダメなのか?」という点について考えておきましょう。

廃棄物を収集するには許可が必要!

ゴミの種類
許可の種類
事業系一般廃棄物
家庭系一般廃棄物
一般廃棄物収集運搬業許可
産業廃棄物
産業廃棄物収集運搬業許可
特別管理産業廃棄物
特別管理一般廃棄物
特別管理産業廃棄物収集運搬業許可

廃棄物を収集するためのゴミの種類と許可の関係は上表の通りです。注意すべきは2点。同じ産業廃棄物でも特別管理産業廃棄物に該当する場合には別途都道府県の許可が必要になる点、特別管理一般廃棄物を収集する場合は等道府県の特別管理産業廃棄物の収集運搬業許可が必要になる点です。
また、収集運搬業許可はあくまで収集し運搬することについて料金を受け取るための許可なので、収集したゴミを処理するための料金を受け取ることはできません。その場合は別途各種の廃棄物処理業許可が必要になります。

不用品回収業だけでなくゴミ屋敷撤去、片付け代行などの事業を展開しようとするときに、この一般廃棄物収集運搬業許可があれば、依頼者にワンストップサービスが提供できるため、他の業者との差別化を図ることができます。
しかしそこには非常に大きな壁があります。というのも産業廃棄物収集運搬業許可と一般廃棄物収集運搬業許可を比べたとき、後者を取得するのは極めて難しいからなのです。

これには様々な理由がありますが、大きな理由のひとつは法律上、許可を出すまでのハードルが高く設定されているからです。
廃棄物処理法第7条第5項には一般廃棄物収集運搬業許可について「市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない」と書かれたうえで、1号に「当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること」と記されています。つまり市町村が「今の体制では家庭系ごみの収集が追いつかない!」とならなければ、許可が下りないというわけです。

なお、許可なしに廃棄物収集運搬業を営業してしまうと、一般廃棄物・産業廃棄物・特別管理産業廃棄物どの場合でも5年以下の懲役か1,000万円以下の罰金、またはこの両方の罰則が与えられることになっています。

なぜ許可がないと収集してはいけないのか?

不法投棄

「依頼者の利便性を図ろうとしているだけなのに」「細かいことを言わずに許可をくれてもいいじゃないか」そう言いたくなる人もいるかもしれません。しかしもしこの許可制度がないと、正しい方法で廃棄物の収集運搬をしない業者までもが営業できるようになってしまいます。

環境省の調査によれば平成25年度の日本全体のゴミの総排出量は4,487万4千トン。5,500万トン近くあった平成12年度から比べればかなり減っていますが、昭和46年度の3,883万1千トンから比べれば604万3千トン増加しています。
仮に無許可営業の廃棄物収集運搬業者が増えたとしても、この全てが不適切に扱われるわけではありません。しかし現在の私たちの衛生的な生活が崩れ去ることは間違いないでしょう。

したがって廃棄物運搬処理業の許可をはじめとする廃棄物行政は必要不可欠なのです。

今の法律は「完璧」ではない

今の制度には問題もある。

しかしだからといって今の廃棄物行政が完成されているというわけでは決してありません。廃棄物処理法第7条第5項の1号が示すのは、言ってしまえば「市町村の裁量で許可・不許可が決まる」ということです。そのため地域によっては条件さえ満たせば比較的簡単に取得できたり、条件を完全にクリアしても新規の業者を増やさないように許可を与えないといったケースもあります。

もちろん、新規参入者になかなか許可を与えないような市町村ばかりではありません。とはいえ廃棄物収集運搬業者の数が足りているわけでもないのです。事実、使わなくなった(もしくは使えなくなった)不要品を捨てたいけれど、依頼できる業者がいないために捨てられない人が少なからず存在します。

例えばタンスが壊れたとします。新しいタンスを買って古いタンスを捨てたいですが、今の仕組みであれば粗大ゴミ収集を市区町村に依頼し、指定日時に家の中にあるタンスを外まで出さなければなりません。
男手がある家庭なら可能かもしれません。しかし、腰を痛めている一人暮らしの方や、体の不自由な方にタンスを外まで出せというのは無茶な話です。
また、高齢者の方にその手順が踏めるでしょうか。

法律にしたがえば廃家電を捨てるためには、市町村もしくは市町村が許可した一般廃棄物収集運搬業者に依頼して、収集してもらう必要があります。しかし全ての市町村の職員や許可業者がマンションやアパートの部屋まで取りに来てくれるわけではなく、日時も即日ではありません。
決められた日時に、自分で所定の場所まで運ぶ必要があります。
このルールは一人暮らし世帯であろうがお年寄りであろうが、無関係に適用されます。これではいつまで経っても粗大ごみを捨てることができません。

例えば一般廃棄物の収集運搬業許可の範囲を条件付きで拡大するなどできれば、こうした問題にも解決の糸口は見えてくるはずです。この意味で今の法律は完璧ではなく、一刻も早い改善が求められます。

その「回収」は合法ですか?違法ですか?

最後にここまでの内容を4つのQ&Aで確認しておきましょう。

Q 会社を経営している友人から「会社で出た不要な帳票類をまとめて回収してくれないか」とお願いされたので、ゴミとして引き取り、その料金を受け取った。これって合法?
A 事業系一般廃棄物を収集運搬しているため無許可営業となり、違法です。

Q ゴミ屋敷の清掃を依頼されたため、生ゴミなどリユースができないものは一般廃棄物収集運搬業者に引き渡し、なんとかリユースできそうなソファなどは運搬料金を受け取って回収した。これって合法?
A リユースできるものだけを回収しているため、合法です。ただし古物を買い取る場合は古物営業許可が別途必要となります。

Q 隣の自動車修理工場が廃車のボディを山積みにしたまま放置していたので、営業をかけて無料で回収させてもらい、スクラップ業者に持ち込んだ。これって合法?
A 産業廃棄物収集運搬業許可がなければ違法です。無料で回収していても、スクラップ業者に持ち込んで利益を得てしまえば営利目的の営業となります。

Q 産業廃棄物収集運搬業許可を持っているので、大手企業向けに不要な帳票類の古紙回収サービスを展開している。これって合法?
A 事業活動以外から出た事業系ごみは一般廃棄物なので、このサービスは違法です。紙くずが産業廃棄物になるのは製紙業などの特定の業種のみです。

各種廃棄物の定義をしっかりと確認し、無許可営業にならないよう細心の注意を払いましょう。