「廃棄物処理法」と「家電リサイクル法」および「小型家電リサイクル法」は、不用品回収業と深い関わりのある法律です。しかし同時にこれらの法律はいきなり条文を読み始めても理解しづらく、なかでも廃棄物処理法は特にわかりづらいうえに、関連する法令や通知が多数存在するためにさらに理解が難しくなっています。
とはいえ法律は守らなくてはなりません。「よくわからないから放っておこう」と法律を気にせずに営業していれば、ある日突然営業停止命令が下されるかもしれないのです。ここではこれら3つの法律の概要と、不用品回収業者が知っておくべきポイントを簡単に解説します。「違法業者」にならないように勘所をしっかり押さえておきましょう。
廃棄物処理法のポイントを理解しよう
まずは不用品回収業者にとって最も重要な法律である「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法、廃掃法とも呼ばれる)」について解説します。
廃棄物処理法の重要ポイントと重要な通知
廃棄物処理法には何が書かれている?
廃棄物処理法の目的は、適正な廃棄物の処理によって生活環境の清潔化を実現し、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。つまるところ「廃棄物をちゃんと処理するために守ってほしいルール」です。内容はおおむね以下の通りです。
テーマ
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主な内容
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「廃棄物」とは何か? | 廃棄物と有価物の違い、一般廃棄物と産業廃棄物の違いなど |
廃棄物を処理する「責任者」は誰か? | 事業者、地方公共団体、地域住民の責任と義務など |
「産業廃棄物」は誰が、どうやって処理するべきか? | 産業廃棄物の処理は自治体主導で行うこと、民間で処理をするためには許可が必要であることなど |
やってはいけないことは何か? | 廃棄物はみだりに捨ててはいけない |
行政ができることは何か? | 関係者からの報告要請や、関係する場所への立入検査など |
このようにまとめると「なんだわかりやすいじゃないか」と思うかもしれません。しかし「では実際にどこをどう読んで、具体的にどう守ればいいのか」を考えると、それだけで本が一冊できるほど複雑かつ曖昧な法律なのです。ここでその全てを解説するのは不可能なので、以下では重要ポイントと重要な関連通知に絞って解説します。
廃棄物処理法の重要ポイント
不用品回収業に営むにあたって重要な廃棄物処理法のポイントは以下の3点です。
1.「廃棄物」を回収するには許可が必要である。
2.「廃棄物=ゴミ」と「有価物=リユース・リサイクル品」の違いは総合的に判断される。
3.廃棄物には「一般廃棄物」と「産業廃棄物」がある。
まず前提として理解するべきなのは廃棄物の回収には許可が必要だという点です。もし許可のない事業者がお金をもらって廃棄物を運んだり(収集運搬)、焼却や埋め立てなどの方法で処理をすると「無許可事業者(違法業者)」とみなされて処罰を受けなければなりません。しかし不用品回収業者の大半は廃棄物関連の許可を持っていません。
ではなぜ処罰を受けずに済んでいるのでしょうか。これには2番目のポイントである廃棄物と有価物の違いが大きく関わっています。つまり不用品回収業者が回収しようとするものが、もう価値のない処分されるだけのゴミであるか、まだ誰かにとって価値があったり、資源としての価値があるリユース・リサイクル品なのかが重要です。
ゴミとみなされれば収集運搬・処理には許可が必要ですが、リユース・リサイクル品だとみなされれば古物営業法の許可だけで買い取ることができます。ただしこの廃棄物と有価物にはグレイゾーンがあり、厳密には「その物の性状」「排出の状況」「通常の取り扱い形態」「取引価値の有無」「占有者の意思」という5つの基準で総合的に判断されます。
また第3のポイントとして挙げた通り、廃棄物には家庭から出る一般廃棄物と、事業所などから出る産業廃棄物があります。実は同じ廃棄物関連の許可でも、産業廃棄物の許可は一般廃棄物の許可に比べて取得しやすい傾向にあります。とはいえ、たとえ産業廃棄物の許可を持っていたとしても一般廃棄物と産業廃棄物を混同して収集運搬・処理をしてしまえば、「無許可営業」に当てはまってしまいます。そのためには一般廃棄物と産業廃棄物の違いをしっかり理解しておく必要があります。
廃棄物処理法関連の重要な通知
不用品回収業を営むに当たって重要な廃棄物処理法関連の通知は以下の2つです。
・環廃産発第 1303299 号「行政処分の指針について」
・「エネルギー分野における規制・制度改革に係る方針」(平成 24 年4月3日閣議決定)において平成 24 年度に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について
行政における「通知」とは、法律だけではわかりにくい部分について「具体的にはこうやって運用してください」と補足するものです。この2つは廃棄物処理法における「廃棄物」の定義について補足した通知になります。
「行政処分の指針について」は先ほども触れた、廃棄物か有価物かを総合的に判断するための5つの基準を示した通知です。
判断基準
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その内容
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その物の性状 | 品質が利用用途に合っており、かつ飛散や流出、悪臭等がないか |
排出の状況 | 計画的に排出されており、適切な保管・品質管理がされているか。 |
通常の取扱い形態 | 製品として市場が成立しているか。 |
取引価値の有無 | 受け取る側に対し、有償で引き渡されているか。* |
占有者の意思 | 占有者に適切な利用、または他人に有償で引き渡す意思があるか。 |
※処理料金に該当する金品の受け渡しがあると廃棄物とみなされる。また引き渡し時の価格が、輸送費用などを差し引いても引き渡し側に損失がある場合も、廃棄物の収集運搬とみなされる。
基準が示されたからといって判断が簡単になったわけではなく、廃棄物か有価物かがあやふやな物に関しては今後も議論や裁判が行われていくでしょう。実際これまでにも「おから」や「木くず」などを対象に裁判が行われています。
もうひとつの通知は別名「手元マイナス通知」と呼ばれているものです。「行政処分の指針について」によって5つの判断基準が示されたものの、実務上その都度全ての判断基準について深く検討している時間はありません。そのため一般的には、「誰かがお金を出して買う物=有価物」「誰かにお金を払って引き取ってもらう物=廃棄物」と判断されます。しかしこの手元マイナス通知は「そうとは限らないので注意してください」という見解を示したのです。
例えば家具製造工場から出る木くずを、あるリサイクル工場まで持って行くと50円で買い取ってくれるとします。しかし実際にリサイクル工場に運ぶとなると人件費や燃料費なども含めて300円がかかります。このとき手元=家具製造工場では250円のマイナスが生じています(手元マイナス)。
「誰かがお金を出して買う物=有価物」という考え方に基づけば、50円で買い取ってもらっている時点でこの木くずは有価物です。ところが結果的には250円を支払って引き取ってもらっているので、考えようによっては「誰かにお金を払って引き取ってもらう物=廃棄物」と判断することもできます。
手元マイナス通知が明らかにしたのは、上の図のような見解です。すなわち排出事業者からリサイクル事業者の手前までは廃棄物として考える可能性もあるが、リサイクル事業者の手に渡って以降は有価物である、というわけです。したがってたとえリサイクル資源として引き取ってもらうとしても、家具製造工場の木くずをリサイクル工場まで収集運搬するには、産業廃棄物収集運搬業の許可が必要になります。
不用品回収業者も知っておくべき「平成29年改正」
続いて平成29年に廃棄物処理法に加えられた改正の内容から、不用品回収業者に関わる改正17条の2について解説します。この改正によって、これまで曖昧だった「雑品スクラップ」における有価物と廃棄物の区別がはっきりしました。
雑品スクラップとは家電やOA機器などのスクラップを指します。これらの中には価値のあるレアメタルが含まれているため、有価物として扱われるケースがあります。ただレアメタルの中にはカドミウムやクロムといった人体や環境に有害なものもあるため、不適切な処理が問題になってきました。しかし今回の改正で、以下の4点を満たすものは廃棄物として適切に処理しなければならなくなったのです。
1.使用が終了している機器である。
2.収集された機器である。
3.一部が原材料として相当程度の価値を持っている。
4.不適切に保管や処分が行われると人体や環境に被害が出る可能性がある。
したがって家電やOA機器などを不用品を回収したあと、スクラップとして処理する必要が生じた場合には注意が必要です。
もっと深く廃棄物処理法を知るために
以下の一覧はそれぞれの内容に対応した本サイトの関連記事をまとめたものです。廃棄物処理法の理解に役立ててください。
記事タイトル
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主な内容
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廃棄物と有価物、どう見分けるべき?定義や判例から考えるボーダーライン
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廃棄物と有価物の違い 5つの判断基準について 廃棄物か有価物かが争点となった判例の紹介 |
不用品回収業者が理解しておくべき「産業廃棄物」と「一般廃棄物」の定義や違い
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廃棄物の定義や具体例 廃棄物の収集運搬 処理に必要な許可について |
家電リサイクル法と小型家電リサイクル法を理解しよう
不用品回収業を営んでいれば、冷蔵庫などの家電やパソコンなどの大型家電の回収を依頼されることも多いでしょう。しかし実はこれらを法律にしたがって回収するには、「家電リサイクル法」と「小型家電リサイクル法」を理解する必要があります。以下ではこの2つの法律について解説します。
家電リサイクル法の重要ポイントと重要な通知
家電リサイクル法の概要
廃家電は再利用できる資源のかたまりです。これらを有効活用するべく、家電の適正な処分方法について定めたのが家電リサイクル法です。この法律が定めている「家電」とはブラウン管・液晶・プラズマテレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、衣類洗濯機・乾燥機の4品目。家電リサイクル法に基づくルールでは、はこれらの廃家電を回収できるのは、原則家電リサイクル券センターに登録している小売業者と定められています。
この「小売業者」には家電量販店やリサイクルショップなどが含まれており、これらの事業者は、廃棄物関連の許可を持っていなくても対象4品目の回収(収集運搬)ができることになっています。
また小売店でない場合でも、例外として一般廃棄物収集運搬業許可もしくは産業廃棄物収集運搬業許可を持っている業者であれば、小売店から委託を受けて収集運搬を請け負うことが可能です。
家電リサイクル法対象品のリサイクルルート
以下に家電リサイクル法にのっとった「合法ルート」と「例外ルート」、逆に家電リサイクル法に違反した「違法ルート」をまとめました。家電を回収する際にはよく注意するようにしましょう。
<合法ルート>
排出者(消費者)
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家電販売店
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家電メーカー
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販売店でリサイクル券を購入して貼付。販売店に引き渡す。 | 回収に向かい、家電メーカーに引き渡す。 | 自前で構築した処理ルートでリサイクルする。 |
<例外ルート>
排出者(消費者)
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家電販売店に委託を受けた不用品回収業者
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リサイクル事業者
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家電販売店に回収を依頼する。 | 回収に向かう。リユース品についてはそのまま買取を行い、廃棄物についてはリサイクル業者に引き渡す。 | リサイクルする。 |
<違法ルート>
排出者(消費者)
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無許可業者
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リサイクル事業者・不法投棄・海外不適正輸出
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回収を依頼する。 | 格安で回収する。 | リサイクル事業者に持ち込まれれば適切に処理されるが、不法投棄や海外への不適正輸出につながることも多い。 |
家電リサイクル法関連の重要な通知
家電リサイクル法に関連する重要な通知は「使用済家電製品の廃棄物該当性の判断について(通称「0円通知」)」です。この通知によって明らかにされたのは、0円や数百円などの安い価格で買い取られる使用済家電製品については、たとえそれが「買取」という取引だったとしても、買い取ったあとに適切に扱われていないのであれば「廃棄物」として考えるべきである、という見解です。
このうちの「使用済家電」とは家電リサイクル法の対象4品目を指します。また「適切に扱われていない」というのは、野焼きや不法投棄されていたり、空き地に山積みにされていたり、もしくは海外に不適正輸出されたりしている状態です。つまるところ「客観的に判断して廃棄物として扱われているような廃家電は、たとえ買取品であっても廃棄物である」というわけです。
したがって不用品回収業者として使用済家電を回収する場合は正当な価格で買い取るか、もし買取後に売り物にならないと判断した場合は適切なルートで処理をしなければなりません。
小型家電リサイクル法の重要ポイント
引き続き、小型家電リサイクル法についても解説していきましょう。小型家電リサイクル法の対象品目は多岐にわたります。電話機、携帯電話、PC、ハードディスク、プリンター、モニター、ヘアドライヤー、デジタルカメラ……ざっと挙げてもこれだけあります。この法律はこれらの小型家電を産業廃棄物として収集運搬・処理する際には、「産業廃棄物許可業者」「小型家電リサイクル法認定事業者」「小型家電リサイクル法認定事業者の委託業者」のいずれかに委託するようにせよ、と定めています。
注目したいのは排出者(企業や事業所)は「再資源化を適正に実施し得る者に引き渡すよう努めなければならない」とされている点。この一文は単純埋立のような処理業者への委託はなるべくやめるよう促していますが、逆に言えば「絶対に再資源化を適正に実施し得る者に引き渡せ」とは言っていません。つまり小型家電リサイクル法はある意味で「努力目標」だということです。これまでどおり通常の産業廃棄物として処理しても構わないのです。
「小型家電を産業廃棄物として収集運搬・処理する際には」ということなので、不用品回収業者としては企業や事業所などから使用済小型家電を回収する場合は「廃棄物」としてではなく「有価物」として買い取るようにすれば問題ありません。ただ売り物にならずに廃棄物として処理が必要な場合は、今後の規制引き締めも考慮に入れて、今から小型家電リサイクル法にのっとった方法で処理すると良いでしょう。
「自分たちが何を回収できるのか」を理解しよう
不用品回収業者として「廃棄物処理法」「家電リサイクル法」「小型家電リサイクル法」を守るために最も重要なのは、「自分たちが何を回収できるのか」を理解することにつきます。有価物しか回収できないのか、それとも有価物と産業廃棄物ならOKなのか、あるいは一般廃棄物も回収できるのか。これらを法律にのっとって厳密に理解していれば、違法業者になる可能性をゼロに近づけることができます。特に最重要法令である産業廃棄物については、しっかりと理解を深めておきましょう。