ゴミ収集車

産業廃棄物以外の廃棄物を指す「一般廃棄物」。これを収集運搬するために必要な許可が「一般廃棄物収集運搬業許可」です。家庭から出る「家庭系一般廃棄物」、事業所などから出る「事業系一般廃棄物」のいずれを収集運搬するにせよ、この許可が必要となります。

一般家庭で有価物か廃棄物かの判断に困る品物を引き取ることもある不用品回収業者にとっては、一切をまとめて回収できる一般廃棄物収集運搬業許可は非常に魅力的な許可です。ここではこの許可の取得方法について解説します。

INDEX
  1. 「都市部での取得はかなり難しい」が大前提
    1. 一般廃棄物収集運搬業許可の新規取得が難しい理由
    2. 新規取得が難しい理由の背景は「法律」
    3. 【19/04/24追記】遺品整理士資格で限定認可の可能性も
    4. 地方部なら取得の可能性はある
  2. 一般廃棄物収集運搬業許可の取得方法
    1. 許可を申請するための欠格要件
    2. 許可を申請するための必要書類
    3. 許可を申請する場所や手数料
  3. 不要品回収業者はまず「古物営業許可」から

「都市部での取得はかなり難しい」が大前提

一般廃棄物収集運搬業許可の新規取得が難しい理由

不用品回収業者にとって魅力のある一般廃棄物収集運搬業許可ですが、実は取得が非常に難しい許可でもあります。これには大きく2つの理由があります。

第一にそもそも新規の一般廃棄物収集運搬業者を募集していない市町村が多いからです。不用品回収業者にとっては「一般廃棄物」=「売り物にならないような家具などの粗大ゴミ」ですが、本来の一般廃棄物には生ゴミなどの生活から出るゴミも含まれます。こうしたゴミを回収する業者は「すでに足りている」と行政が考えている場合、新規に募集する必要はないと判断するのです。

第二に「売り物にならないような家具などの粗大ゴミ」の回収がしたいからと一般廃棄物収集運搬業許可を申請しても、許可がおりないからです。確かに粗大ゴミの回収には許可が必要ですが、「それだけでは不十分」と判断するのが大方の市町村の基準となっています。具体的には、事業系一般廃棄物の収集運搬で経営が成立するような事業計画などが求められます。

新規取得が難しい理由の背景は「法律」

六法全書

この2つの理由の背景には「法律」が関係しています。というのも廃棄物処理法第7条第5項には「市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない」として、以下の3つの条件が記されているからです。

1. 市町村が自治体の処理能力で一般廃棄物の収集運搬ができない状態である。
2. 申請内容が市町村が作成している「一般廃棄物処理計画」*に沿っている。
3. 申請する事業者に、環境省令で定める基準に適合する事業継続能力がある。
※大阪市の例はこちら

特に重要なのは1の条件です。これはつまるところ、自治体が自分たちでは処理しきれないと判断するかどうかで決まるということです。行政の裁量で判断されるため、現実としてお年寄りや一人暮らし世帯が大きな粗大ゴミの扱いに困っているという問題が起きていても、「行政として現状で業者数は十分である」と判断すれば許可は下りないのです。現実に即した法律だとはとても言えませんが、これが現状です。

【19/04/24追記】遺品整理士資格で限定認可の可能性も

北海道を所在地とする一般社団法人遺品整理士認定協会が自治体に働きかけたことにより、遺品整理士資格を取得している事業者限定で、一般廃棄物収集運搬業許可を取得できる自治体が少しずつ増え始めています。

そのため遺品整理業務限定ではありますが、同資格を取得することで一般廃棄物収集運搬業務を行うことができる可能性があります。遺品整理サービスを今後展開する予定がある場合で、かつ遺品整理士資格の取得を検討している場合は、管轄の自治体窓口に問い合わせる価値はあるでしょう。

ただし2019年4月時点では限定認可の条件整備や申請方法などの点において、協会側・自治体側の仕組みづくりが万全ではなく、限定認可の本格化にはまだ時間がかかると思われます。

地方部なら取得の可能性はある

しかし限定認可を利用しなければ、一般廃棄物収集運搬業許可の取得ができないというわけではありません。地方部では「市町村が自治体の処理能力で一般廃棄物の収集運搬ができない状態である」と判断し、新規募集をしているところもあるからです。「そうかダメなのか」と諦めるのではなく、一度自分の市町村に問い合わせてみるのもいいでしょう。

以下では「ウチの市町村は募集していた」という人のために、具体的な許可の取得方法について解説していきます。

一般廃棄物収集運搬業許可の取得方法

許可を申請するための欠格要件

廃棄物処理法第7条第5項には4つ目の条件として欠格要件が定められています。以下の10の項目のいずれかに当てはまると、たとえ市町村が新規募集をしていても許可取得はできなくなります。

1. 精神障害があるなどの理由で判断能力がないとされる者(成年被後見人、被保佐人)または自己破産をしたまま復権していない者。
2. 禁固刑以上の前科があり、服役を終えてから5年未満の者。
3. 廃棄物処理法をはじめとする関連法令に基づく処分を受けてから5年未満の者、または暴力団対策法に基づく処分を受けてから5年未満の者。
4. 廃棄物処理法・浄化槽法における許可を取り消されてから5年未満の者。
5. 廃棄物処理法・浄化槽法における許可取り消し処分の通知があった日から、実際の処分の有無が決まる日までの間に事業廃止の届出をした者のうち、その届出から5年未満の者。
6. 5の届出に該当する事業者の役員や使用人(支店長など)だった者のうち、その届出から5年未満の者。
7. 一般廃棄物収集運搬業の業務において、不正または不誠実な行為をする可能性がある者。
8. 申請者が営業能力のない未成年者で、その代理人が1~7に該当する者。
9. 申請者が法人で、役員や使用人に1~8に該当する者がいる者。
10. 申請者が個人で、そのうちの使用人に1~7に該当する者がいる者。

なお、許可要件については前述した廃棄物処理法第7条第5項が示す1〜3の条件を参照してください。

許可を申請するための必要書類

次に許可を申請するための必要書類を確認しておきましょう。申請者が法人であるか個人であるかによって必要書類が変わるため、各自間違いのないように作成・提出が必要です。

個人に必要な書類
許可申請書
事業計画書
事業所、事業に使う施設などの図面、説明書類など
車両の写真、車検証、使用権限証明書
一般廃棄物の処理を的確に行うための知識・技術的能力の証明書(講習会を受けて取得する必要がある)
誓約書(10個ある欠格要件のうち、1〜7に該当しないと誓約する書類)
住民票
納税証明書

法人の場合は上記の9種類の書類に加えて、以下の3種類の書類が必要です。

法人に必要な書類
役員名簿
定款、履歴事項全部証明書
過去の年度の貸借対照表、損益計算書

許可を申請する場所や手数料

許可を申請する先は、市町村の環境局などの担当窓口です。申請手数料は1万円(車両検査手数料含む)となっています。

不要品回収業者はまず「古物営業許可」から

古物商許可

事業計画書などの書類作成の手間や、許可が下りる可能性の低さを考えると、不用品回収業者が一般廃棄物収集運搬業許可を取得しようとするのは現実的ではありません。

もし一般家庭への不用品回収業をメインに考えているのであれば、廃棄物収集運搬業許可ではなく「古物営業許可」の取得を考えるべきでしょう。不用品回収業と古物営業許可の関係や、取得方法については「不用品回収業で法令に基づいた営業をするには?許可申請を徹底解説!」で詳しく解説しています。ぜひ参照してみてください。