『リサイクル通信』は2021年9月25日発行の紙面上で、同紙の取材によって警視庁から「フリマアプリでの仕入れは古物営業法で定める本人確認等を履行することができないため、実質的に違法である」という旨の公式見解を引き出したことを明らかにしました。

ヤフオク!やメルカリが登場して以降、古物商業界ではオークションサイトやフリマアプリを通じた仕入れ(以下「フリマアプリ仕入れ」)は、あくまでグレイゾーンとして扱われてきました。しかし、それについに「グレイではなく黒」という見解を出したのです。

今回は警視庁がなぜこのような見解を出したのかを解説するとともに、今後の古物商の仕入れについて考えてみたいと思います。

フリマアプリ仕入れが「事実上、黒」の理由

フリマアプリ仕入れが実質的に違法になってしまうのは、オークションサイトやフリマアプリでは、古物営業法等が定める「非対面取引における相手方の確認方法」をとることができないからです。

「古物商許可があればいいのでは?」「運営会社が本人確認をしているから問題ないのでは?」と考えている人もいるかもしれませんが、今回の『リサイクル通信』の取材により、いずれも間違いであることが警視庁の担当者や弁護士の口から語られています。

その内容をまとめると、下表のようになります。

世論の見解 警視庁・弁護士のコメント(要約)
古物商許可があればいい フリマアプリ仕入れによる古物取引を目的に古物商許可を取得しようとした人たちは、申請時に「非対面取引における相手方の確認方法」をとれない点を指摘され、申請を取り下げたり、業態を見直したりしている。
運営会社が本人確認をしているから問題ない 現行の古物営業法では、買取をする古物商が本人確認をすると定められているため、運営会社の本人確認では不十分。

「個人として登録して、そのアカウントで仕入れをすれば大丈夫」と言う人もいますが、営利目的で、かつ反復継続して取引をした場合は、古物商の無許可営業として違法になる可能性が濃厚です。

また取り扱う商材によっては、「買取金額が1万円以下だから本人確認は必要ない」と考えている人もいるのではないでしょうか。

確かに古物営業法等では(書籍・ゲームソフト・CD・DVDを除く)買取金額が1万円以下の取引には本人確認が必要ないとされています。しかし自治体によっては、親の同意なしに未成年から古物を買い取ってはいけないことになっています。

現状、オークションサイトやフリマアプリは基本的に匿名性。親の同意があるかどうかはもちろんのこと、年齢についても古物営業法等の基準を満たすような形で確認することはできません

結果として「フリマアプリでの仕入れは古物営業法で定める本人確認等を履行することができないため、実質的に違法である」という結論になるのです。

個人としてフリマアプリ仕入れをする場合 営利目的で、かつ反復継続した場合、無許可営業で違法となる。
古物商としてフリマアプリ仕入れをする場合 買取金額1万円以上 「非対面取引における相手方の確認」が必要になるが、現状はできないため、違法となる。
買取金額1万円以下(書籍・ゲームソフト・CD・DVDを除く) 未成年の場合は自治体の条例などにより違法になる可能性があるが、未成年かどうかの確認ができないため、実質的に違法となる。

古物商の仕入れは、より「ITスキルの強さ」がものを言う時代へ

すでにオークションサイトやフリマアプリが太い仕入れ経路になっていた場合、今回の警視庁の公式見解はかなりの痛手になるはずです。

とはいえ現時点でフリマアプリ仕入れが実質的に違法だと判断される以上、そのままオークションサイトやフリマアプリに仕入れを頼るわけにはいきません。

そこで改めて考えるべきなのが、Web戦略の強化です。

リサイクルショップや不用品回収業などの古物商にとって、仕入れは生命線。できればコントロールできる経路を持っておきたいものです。しかし実店舗やチラシなどのオフラインの戦略に頼っていても、なかなか成果が出ないのも事実でしょう。

だからこそ、自社HPを強化して「リサイクルショップ 地域」「不用品回収 地域」といったキーワードでGoogle検索の上位を狙う意味があるのです。

またTwitterやInstagramといったSNSを活用するのも一つ。事実、Instagramを活用して知名度を上げているリサイクルショップなども少しずつ増えてきています。

いずれも自力でやれば時間と手間がかかり、専門家に依頼すればコストがかかります。簡単に成果が得られるものではありません。

ですが、オークションサイトやフリマアプリという仕入れ経路が事実上活用できなくなった今がWeb戦略の強化の好機と考え、一歩を踏み出してみてもいいのではないでしょうか。

まとめ

現状、オークションサイトやフリマアプリで仕入れをしたからといって、いきなり逮捕・営業停止処分になる可能性はそこまで高くないでしょう。

しかしHPに明記したうえで、こうした公式見解を出したことを考えれば、「いつでも対処できるぞ」という姿勢を見せたと考えることもできます。

もちろん古物営業法が時代に合わせて改正になる可能性もありますが、結論が出るまでには年単位の時間が必要です。

これまでオークションサイトやフリマアプリで仕入れをしてきた古物商は、今一度仕入れ経路を見直すとともに、自社HPやSNS運用をはじめとするWeb戦略にも注力していく必要がありそうです。