2022年6月20日から、改正航空法が施行されます。「なぜいきなり航空法の話なのか?」と思うかもしれませんが、実は一部のリサイクルショップなどにとってはかなり重要なニュースなのです。

というのも今回の改正により、無人航空機(以下ドローン)に関する規制が強化され、中古ドローンの買取に注意が必要になるからです。

しかも施行自体は6月20日からですが、実は施行されてから対応では手遅れになるケースもあります。

以下では改正内容のポイントを説明するとともに、中古ドローンを取り扱うリサイクル事業者にどのような対応が求められるのかについて開設します。

INDEX
  1. 航空法改正で「ほとんどすべてのドローン」が登録義務化
  2. 事業者は「買取時の登録抹消の事実確認」をマニュアル化しよう
  3. 100g以上200g未満の機体が「リモートID」搭載で飛べなくなる?
  4. リモートID搭載を回避しよう!免除を受ける方法と事業者がとるべき対応
  5. まとめ

航空法改正で「ほとんどすべてのドローン」が登録義務化

今回の航空法改正で最も大きな変更は、実質ほとんどすべてのドローンに所有者の氏名などの登録義務が課せられるという点です。

今までの航空法では、機体重量が200g以上のドローンを無人航空機と呼び、これに対して規制を設けていました。200g以下のドローンは模型航空機と呼んでラジコン等と同じ扱いとし、特別な規制は設けられていませんでした。

そのためメーカーも機体重量をギリギリの199g以下に納め、ライトユーザー向けの製品をリリースするなどしてきました。

しかし今回の改正で、無人航空機の定義が200g以上から100g以上に引き下げられたのです。結果、超軽量の製品を除き、実質的にほとんどすべてのドローンが規制の対象となる無人航空機に含まれることとなりました。

同時に、無人航空機に含まれるドローンに対して所有者情報の登録義務化が決定。2022年6月20日以降、未登録の機体を飛行させることは原則違法行為となり、航空法違反で1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられます。

ドローンの利活用が進む中で、ドローンによる事故や無許可での飛行が頻発したことから、事故の原因究明や安全確保のために、まずは「誰のドローンなのか」をはっきりさせようというわけです。

事業者は「買取時の登録抹消の事実確認」をマニュアル化しよう

航空法の改正を受けて、中古ドローンの買取事業者は最初に何をするべきなのでしょうか。それは買取時の登録抹消の事実確認のマニュアル化です。

「誰のドローンなのか」を登録制度によって明確にすると、今度はそのドローンの所有者が変わった場合に、登録内容も変更する必要があります。

つまり所有者Aがドローンを買取事業者に売却したあと、所有者Bがその中古ドローンを購入した場合、あらためて所有者Bのドローンとして登録し直す必要があるのです。

この時注意するべきは、所有者Bが購入したドローンを自分のものとして登録し直すには、基本的に所有者Aが登録抹消手続きを行なっている必要がある、ということ。

登録抹消手続きは現所有者しかできないため、買取後に事業者や所有者Bが代行することはできません

したがって買取・販売後に登録抹消手続きがされていることが発覚すると、お客様に迷惑がかかるだけでなく、対応にかかる労力と時間が大幅に増えてしまいます。

だから「買取時の登録抹消の事実確認」をマニュアル化し、スタッフ間で周知徹底する必要があるのです。

確認方法は簡単です。国土交通省が今回の登録義務化のために開設した無人航空機登録ポータルサイトからドローン登録システムにログイン。

そこから登録内容の照会画面に移動すれば、そのドローンの現在の登録状況を確認することができます。

店頭買取であれば査定時に照会画面やスクリーンショットを提示してもらえば十分でしょう。宅配買取の場合は、メールにスクリーンショットを添付してもらう、もしくは印刷したものを同梱してもらうなどで対応できます。

100g以上200g未満の機体が「リモートID」搭載で飛べなくなる?

航空法改正に際して、もう一点注意するべきポイントがあります。それはリモートIDの搭載義務化です。

リモートIDとはドローンの機体に内蔵、もしくは外付けする機器のことで、電波を通じて機体の識別情報を発信し、警察などが飛行中であっても登録済み機体なのか、未登録機体なのかを判別できるようにするためのものです。

今回新たに規制の対象になった100g以上200g未満の機体にもリモートIDの搭載義務はありますが、問題はこの機器の重量です。

現在開発中のリモートIDは軽量のものでも12g程度の重さがあります。数字だけ見れば軽く思えますが、100g以上200g未満の機体にとって12gは自重の6〜12%に相当します。

一般的に60kgの人間が自重の10%=6kgの荷物を持てば、バランスを崩したり、疲れやすくなったりします。ドローンもこれだけの重量物が追加されれば、性能が低下したり、バランスが崩れて思わぬ挙動をしたりと、事故のリスクが高まってしまうでしょう。

安全面を考慮すると、リモートIDを搭載することで100g以上200g未満の機体の中から飛行できなくなる機体が相当数出てくる可能性が十分あるのです。

リモートID搭載を回避しよう!免除を受ける方法と事業者がとるべき対応

現在100g以上200g未満の機体を所有しているユーザーはもちろんですが、買取事業者にとってもリモートIDの搭載義務化は大きな問題です。すでに買取が成立している100g以上200g未満の機体の商品価値が大きく下がってしまうからです。

しかしこのリモートIDの搭載義務化には救済措置があります。

一つは十分な強度の紐などで機体を係留して行う飛行の場合。もう一つは飛行を監視する補助者を配置する、またはどの範囲を飛ぶかを明らかにするなどしたうえで飛行する場合。

そしてもう一つが、2022年6月19日までに事前登録手続きを行なった機体の場合です。

100g以上200g未満のドローンの在庫がある買取事業者にとっては、この6月19日が一つのタイムリミットとなります。

事前登録締め切りが近づくほど市場価格が下がっていくとすれば、売り尽くしセールなどをしてでも、できれば4月いっぱい、最悪でも5月いっぱいには在庫を売り切っておきたいところです。

加えて、新たな買取にも注意が必要です。例えば5月に入ってから持ち込まれた買取に関しては、市場価格が下がったあとを考えた査定基準にするなど、6月以降を見越したマニュアル改訂が必要になるでしょう。

どのタイミングでどのようなアクションを起こすかは事業者ごとに違って当然です。しかし何かしらの対策が必要だという点においては、中古ドローンを取り扱う買取事業者全てに共通していると言えそうです。

まとめ

今回の航空法の改正は、中古ドローンを取り扱う事業者にとっては、絶対に無視できない出来事です。

国土交通省の運営するポータルサイトQ&Aを詳しく読み込むとともに、できるだけ早い対応をおすすめします。