古物営業法の定めにより、リユース事業者は買取時に本人確認をしなければなりません。この際の本人確認書類の定番と言えば運転免許証、そして健康保険証です。
しかし2020年10月に行われた健康保険法の改正により、買取時の本人確認の際に健康保険証を使用する場合、注意しなければならないことが増えたのです。もしこのルールを無視して本人確認書類として使い続けると、健康保険法違反とみなされる恐れがあります。
以下では今回の健康保険法改正の概要を紹介するとともに、どうすれば法令を遵守できるかを具体的に解説します。
健康保険法の改正が、なぜリユース事業者に関係するのか?
2020年10月に健康保険法が改正されました。主な改正点は以下の7点です。
・オンライン資格確認の導入
・オンライン資格確認や電子カルテ等の普及のための医療情報化支援基金の創設
・NDB、介護DB等の連結解析等
・高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施等
・被扶養者等の要件の見直し、国民健康保険の資格管理の適正化
・審査支払機関の機能の強化
・その他
参考:厚生労働省
これだけを見ると、今回の法改正とリユース事業者は全くの無関係に思えます。しかしこのうち「オンライン資格確認の導入」と、買取時の本人確認に密接な関係性があるのです。
というのも、個人に健康保険の被保険者の資格があるかどうかをオンラインで確認できるようにするために、今後健康保険証に記載されている記号/番号が個人と紐づけられることになったからです。これにより、健康保険証の記号/番号は個人を特定できる情報=個人情報となり、個人情報保護の対象となります。
この結果、「被保険者番号について、個人情報保護の観点から、健康保険事業の遂行等の目的以外で告知を求めることを禁止(告知要求制限)する」というルールが設けられたのです。
簡単に言えば「被保険者番号が確認できる状態で保管するな」ということ
「じゃあ、健康保険証は本人確認書類として使えないの?」と思った人もいるかもしれません。しかし今回の法改正はそこまで厳しい話ではありません。
なぜなら「健康保険証を健康保険事業の遂行等の目的以外で告知を求めることを禁止する」ではなく、あくまで「被保険者番号を健康保険事業の遂行等の目的以外で告知を求めることを禁止する」だからです。
つまるところ、思い切りわかりやすく言えば「被保険者番号が確認できる状態で保管するな」という話なのです。では具体的にどうすれば法令を遵守できるのでしょうか。答えは簡単。以下のルールをお店のオペレーションに追加し、実践するだけで問題ありません。
対面買取の場合
・記号/番号の書写しをやめる。
・コピーをとる際は記号/番号が写らないようにポストイットなどで隠してコピーする。
・記号/番号をコピーしてしまった場合は、黒ペンなどで塗りつぶして復元不可能な状態にする。
非対面買取の場合
・あらかじめお客様に記号/番号を隠してコピーするようにお願いする。
・記号/番号がコピーされてしまっていたら、黒ペンなどで塗りつぶして復元不可能な状態にして保管する。
被保険者番号が確認できる状態で保管しなければいいので、実際のやり方は他にもあるかと思います。しかし大切なのは「健康保険証による本人確認の場合は、こういうルールで情報を保管する」というルールをきちんと決めること。
そうすることで、あとからちゃんと実践できているかどうかが確認しやすくなり、より確実に法令を遵守できるようになります。
まとめ
リユース事業者として古物を扱う以上、本人確認の手続きをしないわけにはいきません。しかも本人確認書類として健康保険証を提示するお客様は多いため、今回の健康保険法の改正はリユース事業者にとって「必ず理解しておくべき法令」の一つと言えます。
必要もないのに行政などと揉めることがないよう、今のうちからきちんとした社内ルールを作り、法令遵守を徹底しましょう。