便利屋がより多くの依頼を勝ち取るためには、できるだけ多種多様な依頼に対応できるようサービスを整える必要があります。その候補の一つとしてあげられるのが庭仕事や草刈りなど庭に関するサービスです。しかし問題は、いざこれらのサービスを始めようと考えても、いったい何から始めればいいかわからないことです。

ここではこの問題を解決するために、便利屋がサービスの一環として庭仕事・草刈りを始める前に最初に考えるべきことを解説します。

庭仕事、草刈りサービスを始める前に検討するべきこと

庭仕事、草刈りをサービスの一環として始める際に、最初に考えるべきなのは大きく2つです。一つはどこまでの仕事を請け負うのか、もう一つは請け負う仕事に応じた道具・技術・知識は何かです。

どこまでの仕事を請け負うのか

例えば不用品回収サービスと一口に言っても、古物商許可を使ってリユース品を買い取るだけなのか、一般廃棄物収集運搬業許可を取得してもう処分するしかない廃棄物も一緒に回収できるようにするのか、あるいは事業所などにターゲットを絞り、産業廃棄物収集運搬業許可でオフィス備品などの回収・処分を請け負うのかなどサービスの幅があります。

庭仕事、草刈りでも同じです。これらのサービスについて漠然と「こういうサービス」というイメージはあるかもしれませんが、実際にどんな内容なのかを把握できていないという人も多いのではないでしょうか。サービスを始めるにあたっては、まずこの点をよく理解しておく必要があります。

請け負う仕事に応じた道具・技術・知識は何か

どこまでの仕事を請け負うのかが決まったら、その仕事内容に応じた道具や技術、知識が何かを考えなければなりません。

専門の道具や設備がなければできない仕事なのか、あるいは技術や知識がなければ自分や依頼者に危険が及ぶような仕事なのかを知っていなければ、思わぬトラブルを起こしてしまう可能性があるからです。また不用品回収サービスのように特別な許可が必要な仕事があれば、無許可営業などで行政処分の対象になる危険もあります。

だからこそ自分の身を守るためにも、依頼者に満足してもらうためにも、事前にどんな道具や技術、知識が必要かを知っておく必要があるのです。

主な庭仕事の種類10選

以下では草刈りを含む主な庭仕事を全部で10種類紹介するとともに、それぞれに必要な道具や技術などについても簡単に触れていきます。これらを参考に、前述した2つのポイントについて検討してみましょう。

草刈り・草むしり

庭や駐車場のメンテナンスとして最も基本的な仕事です。草むしりなら軍手と人手さえあればできるため、専門的な道具や技術はほとんど必要ありません。草刈りの場合はプロユースの草刈機が必要になりますが、取り扱い自体はそれほど難しくないため、便利屋の中でも扱っている業者は少なくありません。

除草剤散布

除草剤には粒状のものと液状のものがあるので、まずはその違いを知識として理解しておく必要があります。使い方を間違えると枯らしてはいけない植物まで枯らしてしまうので、知識がないまま扱うと依頼者とのトラブルに発展する恐れがあります。また除草剤自体は人体に有害なものなので、取り扱いにも注意が必要です。

とはいえ一般家庭で扱っている人も少なくないため、しっかりと事前に調査しておけば特別な経験がなくても取り扱うことは可能です。便利屋のサービスとしても十分実現可能な仕事と言えるでしょう。

防草工事

地面に太陽が当たって雑草が生育しないように、ホームセンターなどで取り扱いのある防草シートを敷き、その上からさらに砂利を敷くような作業を指します。依頼者が自分でやる際にネックになるのは砂利を運ぶための車や人手ですが、便利屋であればトラックも人手もあるため、十分サービスとして組み込めるはずです。

薬剤散布

庭木などには伝染病などにかかる品種も少なくありません。これを放っておくと害虫が住み着いたり、庭木が枯れてしまったりするため、症状に適した薬剤を散布して殺菌・消毒する必要があります。

道具としては薬剤と散布機が中心となるため、大きな設備投資が必要なわけではありません。ただし薬剤散布は、感染病の知識や症状の判断、それに適した散布の頻度の決定など、知識や経験の面で専門性が必要な仕事です。そのため安易にサービスに組み込むと、依頼者とのトラブルに発展する危険があります。

害虫駆除

感染病によって発生する害虫のほか、毛虫やハチなどを駆除するのも庭仕事の一つです。建物内のねずみや昆虫等の駆除をするための資格としては防除作業監督者というものがありますが、庭(=屋外)での害虫駆除の場合は必須ではありません

また毒物及び劇物取締法に触れるような薬剤を使う場合は、毒物劇物取扱責任者の資格が必要になりますが、取得は難しくないため、資格についての心配は必要ないでしょう。

とはいえ、ハチのなかでもスズメバチなどの危険な害虫を駆除する場合は、入念な準備と害虫の生態についての知識、迅速かつ確実に駆除する技術と経験が必要になります。したがって安易にサービスに取り入れてしまうと、自分や従業員を危険にさらしてしまう可能性があるため、注意が必要です。

剪定・整姿

不要な枝葉を落とすだけであれば、剪定・整姿の作業は高枝切り鋏や脚立などがあれば十分です。しかし依頼者側に「木を大きくしたい(小さくしたい)」「花を咲かせたい(実をならせたい)」といった要望がある場合は、樹種などに応じた知識と技術が必要になります。

また樹種によってはむやみに剪定をすると傷んでしまって枯れる原因になるような木もあります。サービスとして組み込む場合は、そうした点にも考慮して判断を下す必要があります。

伐採・枝下ろし

木が邪魔になったり、高く成長しすぎたりした場合、木ごと切り倒したり、太い幹をチェーンソーなどで切り落としたり(枝下ろし)する必要があります。専門の道具が必要になるほか、場合によっては高所作業車のような設備も必要になります。

また枝下ろしの場合は木にも大きな負担をかけるため、樹種や季節に応じた対応をする必要もあります。作業の規模が大きいため、失敗した場合のリスクも大きくなります。安易なサービスへの組み込みは避けるのが無難でしょう。

池の清掃など

庭にある池の手入れなども庭仕事の一つです。例えば鯉のいるような池の上水ポンプが泥で詰まってしまった場合、いったん鯉などの生き物を別の場所に避難させた上でポンプのメンテナンスや池の中の手入れを行う必要があります。

とはいえ、こうした状況判断さえできれば、清掃自体は難しい仕事ではありません。

植樹・芝生張り

依頼者の依頼に応じて、庭に木を植えたり、芝生を張ったりするのは専門的な設備も必要なうえ、知識も技術も経験も必要です。例えば芝生を張ると一口に言っても、場所や時期の見極め、地面の耕作や散水の方法、目土や肥料の扱い、芝生の配置など、様々なポイントを抑えなければなりません。

確かに便利屋の中には芝生張りを請け負っているところもあります。しかし未経験の便利屋がいきなりサービスに組み込むには、ハードルの高い仕事だと言えるでしょう。

外構工事

庭仕事を専門とする造園業者の中には、駐車場や石張り・レンガ張り、平野フェンスなどの設置、門扉や立水栓、ウッドデッキなどの設置を請け負うところもあります。

こうした仕事全般を外構工事と呼びますが、1件あたりの請負代金が消費税込500万円以上になると、「とび・土工・コンクリート工事」の許可を取得する必要があります。この許可には土木施工管理技士、建築工管理技師といった資格のほか、所定の年数の実務経験も必要になります。

また仮に消費税込500万円未満の案件だけを請け負うとしても、ある程度の知識と技術、経験がなければ依頼者の満足のいく仕事をすることはできません。これも安易にサービスに組み込むのは避けたほうが無難な仕事と言えそうです。

庭仕事、草刈りサービスを始めるために

実際に庭仕事、草刈りをサービスの一環として組み込む際は、ここまで紹介した10種類の仕事の中から、自社でも取り入れられそうなものを採用するという形をとります。10種類の仕事を見て「これなら自社でもできそうだ」「これは専門的な経験が必要だろうな」など、色々な印象を抱いたことと思います。

しかし実際は一見簡単そうに見えても奥が深い仕事もあれば、専門的すぎて扱えそうにもないサービスもやりようによっては扱える仕事もあります。そこで以下では庭仕事、草刈りサービスを始めるための3つの選択肢を紹介します。

見よう見まねで始める

一つ目は最もコストのかからない方法です。例えば自分の手で行う草むしりや、草刈機を使った簡単な草刈りなどであれば、特別な技術や知識は必要ありません。そのためネットの情報や動画で下調べをしながら、見よう見まねで始めるというやり方でも、十分サービスをスタートできます。

しかしどこまで行っても付け焼き刃のやり方には違いありません。そのため依頼者が満足のいくクオリティが出せなかったり、それが原因で悪い評価の口コミをネットなどに書き込まれたりする可能性も高くなります。この方法を選ぶ場合は、そうしたデメリットもよく理解したうえで、トライアンドエラーの精神を持つ必要があるでしょう。

造園業者に弟子入りして実地で学ぶ

最も堅実と言えるのが、造園業者に弟子入りして実地で学ぶという方法です。確かに便利屋の仕事は一旦ストップしなければならないため、事業としてのスタートは遅れてしまいます。しかしプロの下について給料をもらいながら学べるので、コストもリスクも少なくなるという点が大きなメリットです。

ただしこの方法を選ぶ際は、どのような造園業者を選ぶかが非常に重要な鍵になります。というのも、便利屋として庭仕事、草刈りのサービスを提供するには現場での経験が必須ですが、選ぶ造園業者によってはほとんど関係ない仕事に従事することになるからです。

早く確実に腕を磨くなら個人規模の造園業者

例えば大きな現場をこなすような大手の造園業者に入ってしまうと、現場の仕事というよりそれらを監督する側の仕事が中心になります。また中堅規模の造園業者の場合は下積み期間が長くなりがちで、入社したものの1年近く草刈りなどの簡単な仕事しかやらせてもらえないというケースも少なくありません。

このように考えていくと、弟子入り先の造園業者として適しているのは個人の造園業者や「植木屋」と呼ばれる業者だと言えます。この種の業者は従業員の数も数人程度で、一人一人の責任も重くなる代わりに、仕事もしっかり身につきます。

ただし公共の仕事ばかりをやっている造園業者は職人としての腕を求められないので、学べる仕事のレベルにも限界が早く来てしまう傾向にあります。そのため個人邸や企業の緑地管理、作庭を主に請け負っている業者が弟子入り先としては最適と言えるでしょう。

元造園業者を雇い入れる

最もコストはかかるものの、早い段階で庭仕事、草刈りサービスをスタートさせられるのが、元造園業者を新たに雇い入れるという方法です。ピンポイントで見つけるのは難しい人材かもしれませんが、見つかりさえすればその人材に庭仕事、草刈りサービスを任せながら、自分も仕事を学ぶことができます。

採用の方法としては、ハローワークや求人サイトを利用するほか、造園関連の知識を専門の学部や学校で学んだ人材にリクルーティングを行うのも一つです。一般社団法人日本造園組合連合会のホームページには、造園関連学校の一覧が掲載されているので、そこから目星をつけて採用活動を始めるのもいいでしょう。

ただその場合は相手もプロではなくなるため、現場で経験を積みながら一緒に成長していくという意識が必要になります。

まとめ

便利屋として対応できる仕事の領域が広がれば、それだけ受けられる依頼の数も増えます。ただし便利屋を開業する前に知っておくべき8つのことでも見たように、便利屋の競合は他の便利屋+専門業者です。この中で勝ち残っていくためには、値段設定や接客といった技術以外のところで勝負する必要があります。

庭仕事、草刈りを便利屋のサービスとしてスタートさせる前は、ここまで解説してきた内容だけでなく、こうした戦略面についてもあらかじめ検討しておきましょう。