不用品回収業を営んでいると、依頼者から買い取ったあとに売り物にならないことが判明するケースが少なからず起こります。このような回収品については、「売り物にならない回収品」をどう扱う?違法回収業者にならないための正しい取扱方法でも解説している通り、事業系一般廃棄物もしくは産業廃棄物として適切に処分する必要があります。しかしそのためには当然処分コストがかかるため、全てを処分に回していては経営が圧迫されかねません。
そうした状態を回避するための方法の一つが、リユース品の海外輸出です。ここでは回収品の利益化ルートの一つとしてリユース品の海外輸出の現状と今後の可能性を紹介するとともに、不用品回収業者がこのルートを確立するための現実的な方法についても解説します。
売り物にならない回収品を減らす2つの方法
売り物にならない回収品をできるだけ減らすためには、大きく分けて2つの方法があります。以下ではまずこの2つについて解説しておきましょう。
売り物にならないものは回収しない
一つ目は、そもそも売り物にならないものを回収しないという方法です。買取査定時の基準を引き上げて、売り物にならないリスクがある品物に関しては廃棄物とみなして回収をお断りするわけです。この方法をとれば、確実に売り物にならない回収品は減り、それを事業系一般廃棄物や産業廃棄物として処分するためのコストも抑えることが可能です。
しかし一方で「なるべくまとめて買い取って欲しい」という依頼者のニーズに応えられなくなる=満足度が下がるという点と、もしかしたら売り物になるかもしれない品物を買い取れなくなるリスクが高まるという点において、この方法はデメリットがあります。
海外輸出ルートを活用する
もう一つは、海外へのリユース品輸出のルートを活用する方法です。自社の既存の国内ルート以外の国内ルートを開拓するという選択肢もありますが、同じ日本の中では売れる・売れないの基準の差はさほど大きくありません。
しかし国内と海外、特に東南アジア諸国になると売れる・売れないの基準の差も大きくなりますし、価格の差も大きくなります。したがって、売り物にならない回収品を利益化しようと思うのであれば、海外への輸出ルートを活用するのが賢明だと言えるのです。
この方法の最大のメリットは、依頼者の満足度を上げながら、同時に回収品を利益化できるという点です。しかも日本製のリユース品であれば、輸出先の消費者にも喜んでもらえるので、まさに三方よしと言えるでしょう。
一方でデメリットは、自社で輸出ルートを確立するのは至難の技だという点です。輸出するためには船やコンテナ、現地バイヤーとの関係構築・交渉など様々な手間と時間とコストがかかります。
リユース品海外輸出の現状と今後の可能性
確かにリユース品の海外輸出に関するデメリットは、新たな利益化ルートを開拓する上では無視できないほど大きなものです。しかしリユース品の海外輸出の現状と今後の可能性を考えると、「このルートを活用しない手はない」と言えるほどのマーケットが広がっています。
続いてはアジア各国で日本のリユース品がどのように受け入れられているかを紹介します。
フィリピンは一大マーケットになっている
フィリピンは日本のリユース品の一大マーケットの一つです。現地には壊れたテレビなどを手作業で修理できる人材が揃っており、日本国内では修理コストを考えると売り物にならないようなものでも、しっかりと売り物に加工して販売できる体制ができあがっています。テレビ以外にも日本メーカーのミシンやCDラジカセなども、現地で修理されて商品化されています。
アフリカでは日本のリユース品が人気
遠く離れたアフリカでも、日本のリユース品は人気を集めています。例えばタンザニアでは新品の中国製の自転車よりも、中古の日本製の自転車の方が高値で取引されています。自転車以外のテレビや冷蔵庫などでも、現地の人たちには「早く壊れるが安い新品の中国製」か「長持ちするが高い中古の日本製」かという選択肢で悩んでいるという人が多いのだとか。
現時点であれば日本製品の耐久性や性能は世界トップクラスですから、まだしばらくこうした状況は続くと言えそうです。
カンボジアは新たなマーケットとして要注目
近年急速に発展を遂げている東南アジア諸国においては、今までは売れていたリユース品でも、近年は売れない(もしくは採算が取れない)というケースも見られるようになりました。そこで新たなマーケットとして注目されている国の一つがカンボジアです。
実際カンボジアのリサイクルショップでは、中古の家電はもちろん、時計や人形、食器など様々な日本製のリユース品が並んでおり、日本では売り物として扱えないようなものでも買い手がついています。同国の日本製リユース品のマーケットは今後拡大していくと考えられます。
リユース品海外輸出が抱える問題
日本の貿易統計の中古品の品目分類を見ると、この他にもベトナム、マカオ、香港、アフガニスタンなどにも日本のリユース品は輸出されています。しかしこうしたマーケットの拡大が、深刻な社会問題・環境問題を引き起こしているのも事実です。
例えば本来リユース不可能と判断されるべきもの(=廃棄物)を輸出する、不適正輸出もその一つです。特に家電に関しては大きな問題になっており、香港に輸出されたブラウン管式テレビやパソコンモニターなどが香港の税関当局で輸入を差し止められ、日本に返送されたという事例もあります。
また以下の2本の記事でも解説しているように、中国での雑品スクラップの受け入れが全面的に禁止されました。
これらのことを考えると、輸出する品物が本当にリユース品なのかどうかという点は、今後より厳しく判断されるようになると思われます。
海外輸出ルートを確立している業者と取引しよう
船やコンテナの調達、現地バイヤーとの関係構築・交渉などのコスト、あるいは社会問題や環境問題に巻き込まれるリスクを考えると、一から自社で海外輸出ルートを確立しようとするのは、現実的な選択とは言えません。そこで活用したいのが、すでに海外輸出ルートを確立している業者です。なぜならこうした業者に間に入ってもらい、その業者と取引するという形を取れば、コストやリスクの軽減が可能になるからです。
しかし取引をする際は、買取時にマージンが発生したり、輸出のための輸送費や仲介手数料などが発生したりします。そのため利用する際は、事業系一般廃棄物や産業廃棄物として対応した場合のコストと比較するなどして、自社にとって最善の選択肢をとる必要があります。
業者には大きく分けて2種類ある
リユース品の海外輸出の拠点となっているのは、大都市圏や大阪・神戸・博多・苫小牧といった港で、そのほかにも各地方港から輸出している業者もいます。これらの業者には大きく2種類あり、それぞれに特徴があります。以下ではこれらについて解説しておきましょう。
リユース品ごとに買い取ってくれる業者
一つ目は、リユース品ごとに買い取ってくれる業者です。このタイプの業者は、例えば不用品回収業者がテレビや冷蔵庫など、日本国内では売り物になりそうにもないリユース品をトラックに積んでいくと、その場で品物をチェックし、内容に応じて買い取るという形をとります。
その後のコンテナ搬入や輸送、販売などは全て業者側が請け負うので、そのぶんマージンは大きくなる傾向にあります。ただし業者によっては買取単価も高く設定しているので、うまく活用すれば利益化が可能です。
このタイプの業者を選ぶ最大のメリットはスピードで、持ち込めばその場でお金に換えられるため、在庫を抱える必要がないという点に魅力があります。
コンテナごとに現地に輸送してくれる業者
もう一つは、海上輸送コンテナに輸出したいリユース品を搬入していって、満載になったところで輸送〜販売までを請け負ってくれる業者です。コストに関しては業者によりますが、輸送費の他に販売手数料がかかる場合もあります。
このタイプの業者の特徴は、利益化するまでにかかる時間が長くなる点です。コンテナを満載にするまでの時間に加え、海上輸送に必要な時間、現地での取引が完了するまでの時間もあるため、数週間〜数ヶ月ほどかかる可能性があります。そのためこのタイプの業者と取引するのであれば、長期的な視点で利益化を考える必要があるでしょう。
一方で輸出するリユース品を自社で選別できるというのも、このタイプの業者の特徴です。そのため単価の高いものばかりを積み込めば、それだけ利益を拡大するチャンスがあります。
自社にとって最善の選択肢を選ぼう
業者を選ぶ際はこうした取引方法以外にも、法令を遵守した事業を展開しているか、自社から持ち込みやすい場所に事業所があるか、買取単価や手数料などのコストは適正かなどを考慮する必要があります。せっかく仕入れたリユース品を無駄にしないためにも、取引先は慎重に検討しましょう。
まとめ
回収品を利益化するための引き出しが増えれば、「できるだけたくさんのものをまとめて買い取って欲しい」という依頼者のニーズにも柔軟に対応できるようになります。それは依頼者の高い満足度につながり、リピートやインターネットなどでの口コミにもつながっていきます。
すなわち海外輸出を利益化の選択肢に加えるということは、より多くの依頼を獲得するための効果的な方法の一つなのです。ここで解説した内容を参考にしつつ、より対応力のある不用品回収業者を目指してみてはいかがでしょうか。