電気コード

コンセントや壁スイッチ、廊下のダウンライトや玄関の門灯の修理など、便利屋を営んでいるとちょっとした電気工事を頼まれることも少なくありません。しかしお年寄りのお家の電球交換などを除けば、一般住宅などでの電気周りの修理には電気工事士という国家資格が必要になります。

ここではどのような電気周りの作業に資格が必要なのか、どうすれば取得できるのかなど、この電気工事士という資格について解説します。

INDEX
  1. 電気工事には「電気工事士」資格が必要
    1. 電気工事士資格には種類がある
    2. 電気工作物の種類を理解しよう
    3. 一般住宅などの電気工事なら「第二種電気工事士」でOK
  2. 第二種電気工事士を取得する方法
    1. 取得ルートは全部で三つ
    2. 受験から取得までの流れ
    3. 第二種電気工事士の難易度は低め
  3. まとめ

電気工事には「電気工事士」資格が必要

電気工事士と一口に言っても、実は第一種電気工事士第二種電気工事士という二つの種類があります。これらはそれぞれ請け負える電気工事の種類が変わりますが、それには電気工事の対象となる電気工作物の種類を理解している必要があります。

以下ではこうした電気工事士にまつわる基礎知識を解説したうえで、便利屋に必要なのはどちらなのかを考えます。

電気工事士資格には種類がある

第一種電気工事士免状取得者
自家用電気工作物
(最大電力500キロワット未満)
第二種電気工事士免状取得者
一般用電気工作物

第一種電気工事士の資格を取得し、一般財団法人電気技術者試験センターから免状の交付を受けると、第一種電気工事士免状取得者となることができます。第一種電気工事士免状取得者になると次の電気工事事業を行えるようになります。

1.自家用電気工作物のうち、最大電力500キロワット未満の需要設備の電気工事
2.一般用電気工作物の電気工事
※1のうち、ネオン工事と非常用予備発電装置工事には別途特殊電気工事士各社の認定証が必要になる。

これに対して、第二種電気工事士の資格を取得して免状の交付を受けると、一般住宅や小規模店舗・事業所など電力会社から低圧(600ボルト以下)で受電する場所の配線や電気使用設備などの一般用電気工作物の電気工事が行えるようになります。

また免状取得から3年以上電気工事の実務経験を積むか、もしくは認定電気工事従事者認定講習を受けたうえで、産業保安監督部長から「認定電気工事従事者認定証」を交付してもらえれば、簡易電気工事を行えるようになります。

簡易電気工事とは、自家用電気工作物のうち、最大電力500キロワット未満の需要施設であって、電圧600ボルト以下で使用する電気工作物の電気工事(ただし電線路を除く)を指します。

電気工作物の種類を理解しよう

配電盤

それぞれの電気工事士資格について簡単に解説しましたが、「結局どっちの資格で何ができるんだ?」と感じた人も多いのではないでしょうか。そこで以下では各資格のキーワードとなる電気工作物について解説しておきます。

電気工作物とは、発電所や変電所、送配電線路のほか、一般住宅などの受電設備(変圧器や制御装置、計測機器など)、屋内配線、電気使用設備の総称です。全部で三種類存在し、一般用電気工作物・事業用電気工作物・自家用電気工作物があります。

電気工作物の種類 定義
一般用電気工作物 一般住宅や小規模店舗・事業所など電力会社から低圧(600ボルト以下)で受電する場所の配線や電気使用設備などの電気工作物。
事業用電気工作物 一般用電気工作物以外の電気工作物。
自家用電気工作物 事業用電気工作物のうち、工場やビルのような電気事業者から高圧以上(600ボルト以上)の電圧で受電している事業所などの電気工作物。
なお発電設備が合計で最大電力200 万kW(沖縄電力㈱の場合は10 万kW)を超える電気事業に使われる電気工作物は除く。

具体的にはコンセントや壁スイッチ、廊下のダウンライトや玄関の門灯などは一般用電気工作物、日本各地の電力会社が運用する電気供給設備、発電所や変電所などの大規模設備に使われているのが事業用電気工作物になります。

自家用電気工作物は、多くの電気を必要とするショッピングビルやオフィスビルなどの施設に設置されるキュービクルと呼ばれる高圧変電設備を指します。

一般住宅などの電気工事なら「第二種電気工事士」でOK

便利屋の電気工事サービスを利用するのは、大半が一般住宅に住んでいる人たちですから、便利屋は一般用電気工作物の電気工事が行えれば十分事足ります。したがって便利屋が電気工事サービスを新たに展開する際に取得するべきなのは、第二種電気工事士の資格及び免状だということになります。

第二種電気工事士を取得する方法

便利屋に必要な資格が第二種電気工事士だということがわかったところで、次にこの資格の取得方法について見ていきましょう。

取得ルートは全部で三つ

取得に至るルートは全部で三つあります。一つ目は初めて資格試験を受ける新規受験希望者として取得を目指す場合。

二つ目は筆記試験免除対象者として取得を目指す場合です。この筆記試験免除対象者には前回の筆記試験合格者や、高校以上の学校で電気工事法で定められる課程を修了している人、あるいは電気主任技術者という資格を取得しており、かつこの免状も取得している人が当てはまります。

三つ目は経済産業省大臣が指定する職業訓練校などの養成施設の修了者(もしくはこれと同等以上と都道府県知事が認定した人)として、取得を目指す場合です。それぞれのルートの違いは以下の通りです。

ルート 必要な手続きなど
新規受験希望者 筆記試験での合格
技能試験での合格
免状交付申請・取得
筆記試験免除対象者 技能試験での合格
免状交付申請・取得
養成施設の修了者 免状交付申請・取得

受験手数料9,300円(インターネット申込の場合。払込取扱票申込の場合は9,600円)が必要になるのは、新規受験希望者と筆記試験免除対象者のみ。養成施設の修了者は免状交付申請・取得のみなので、受験手数料は不要です。ただし、免状交付申請には各都道府県が条例で定める手数料が別途必要になります。

受験から取得までの流れ

第二種電気工事士の資格試験は上期と下期に分かれており、2018年からは両方の受験が可能になりました。以下では新規受験希望者を例にとって、受験から取得までの流れを確認しておきましょう。

上期試験 下期試験
1月
2月
3月 受験申込手続を行う。3月中旬〜4月上旬。
4月
5月
6月 上旬の日曜日に筆記試験が行われる。
7月 月初に筆記試験の合格発表(2018年の場合)。
筆記試験に合格していれば下旬の土日に技能試験が行われる。
上旬〜下旬に受験申込手続を行う。
8月 下旬に技能試験の合格発表(2018年の場合)。
9月
10月 上旬の日曜日に筆記試験が行われる。
11月 上旬に合格発表(2018年の場合)。
12月 上旬の土日に技能試験が行われる。
1月 中旬に技能試験の合格発表(2017年に行われた試験の場合)。

筆記試験免除対象者の場合は各日程の筆記試験がなくなり、技能試験のみとなります。

第二種電気工事士の難易度は低め

メガネの女性が丸の旗を持っている。

試験の受け方がわかっても、合格できなければ資格や免状を取得することはできません。では第二種電気工事士の試験の難易度はどれほどのものなのでしょうか。もちろん難しく感じるか簡単に感じるかは人それぞれですが、データだけで判断した場合、第二種電気工事士の難易度は低めだと言えそうです。

というのも筆記試験の合格率が60%程度、技能試験の合格率が70%程度と、他の資格に比べてかなり高いためです。下表はここ5年の第二種電気工事士の合格率をまとめたものです。

年度 筆記試験合格率
(上期下期合算)
技能試験合格率
(上期下期合算)
2013 62% 76%
2014 59% 74%
2015 59% 71%
2016 59% 69%
2017 59% 69%

一般財団法人電気技術者試験センターのデータを元に作成。
※合格率=各試験受験者数÷合格者数×100

ちなみに電気工事関連の最難関資格である電気主任技術者の合格率は全体で10%前後、分野は違いますが行政書士資格の合格率は10%前後〜15%前後となっています。これらの試験と比較しても、第二種電気工事士の合格率は非常に高いことがわかります。

したがって「資格を取得して新たに電気工事サービスを始めよう」というプランは、十分現実的なものだと言えるでしょう。

まとめ

便利屋はあくまで便利屋であり、専門業者ではありません。そのため便利屋における付加価値は「いろいろな仕事に一定以上のクオリティで対応できる」という点です。その意味で、新しいサービスの拡充は非常に重要です。

ここで紹介した電気工事士の資格および免状の取得は比較的ハードルが低いため、電気工事は拡充するサービスとして現実的な選択肢だと言えるでしょう。

ただし最終的に依頼者が評価するのは、技術・サービスの質です。そのため技術に不安がある人は、あらかじめ他の業者で働くなどして技術を学んでおくのがベストと言えます。くれぐれも「資格を持っているだけ」の業者にならないよう注意しましょう。