遺品整理士

2011年には遺品整理業者を主題とした『アントキノイノチ』が公開。2018年7月にはNHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で遺品整理業者が取材されています。このように、遺品整理という仕事は少しずつ世間にも認知され始めています。そんな中、近年注目を集めており、多くの遺品整理業者が取得している資格が遺品整理士です。実際『プロフェッショナル仕事の流儀』で紹介された横尾将臣さんも、遺品整理士として紹介されています。

ここではこの遺品整理士という資格が生まれた背景や資格の内容、認定団体について解説するとともに、不用品回収業者が遺品整理士資格を取得すると、いったい何ができるようになるのかについても解説します。

INDEX
  1. 遺品整理士資格は「正しい遺品整理」のための資格
  2. 不用品回収業者が取得すると何ができるのか?
    1. 遺品整理の基本を理解できる
    2. 遺品整理士認定協会のサービスが利用できる
    3. 他の業者と情報を交換できる
    4. 業界の体質改善に貢献できる
  3. 遺品整理士資格に法的効力はない
  4. 遺品整理士資格は必須ではない
  5. 【19/04/24追記】一般廃棄物収集運搬業許可の限定認可が可能に?

遺品整理士資格は「正しい遺品整理」のための資格

高齢化がますます進む近年の日本においては、ビジネスとしての遺品整理の魅力は年々高まっています。しかし業者の数は増えているものの、業界としては未熟と言わざるを得ません。

故人の思い出の品を不当に安い価格で買い取ったり、格安の見積もりを出しておいて法外な料金を請求したり、引き取った遺品を不法投棄したりと、不用品回収業界にも見られるような問題が遺品整理業界にも蔓延しているのです。このような状況は依頼者側はもちろん、業界の評判のあおりをうける遺品整理業者にとってもマイナスです。

そこで発足したのが北海道に拠点を置く一般社団法人遺品整理士認定協会です。2018年で8周年を迎えた同協会は、2017年時点で2万名以上の会員と950社を超える法人会員を抱えており、遺品整理の専門家の養成に取り組んでいます。

一か所に集められた遺品

この遺品整理士認定協会の基幹事業となっているのが遺品整理士の資格事業です。

資格事業の目的は、大きく2つあります。第一に取得する業者が廃棄物処理法や家電リサイクル法などの基本的な法令や遺品整理業特有の事項に関する正しい知識や依頼者への適切な対応、事例に基づいた実務のノウハウなどを身につけること。第二に資格の浸透を通じて遺品整理業界そのものを健全化することです。このことから、遺品整理士資格は正しい遺品整理のための資格と言うことができるでしょう。

遺品整理士認定協会は、資格の認定以外にも会員を対象とする専門家のセミナー開催や、行政への働きかけ、行政や病院、介護施設などからの依頼のあっ旋なども行なっています。

不用品回収業者が取得すると何ができるのか?

正しい遺品整理のための資格である遺品整理士ですが、不用品回収サービスを本業とする不用品回収業者が取得した場合、どのようなことができるようになるのでしょうか。以下では合計4つのポイントを紹介します。

遺品整理の基本を理解できる

教材を広げている女性。

資格の取得にあたっては、協会が作成した教本・資料集・問題集・DVDの文章や専門家や業界人のDVD講義をもとに、遺品整理の実務や法規制などについて学ぶことができます。

もちろん遺品整理の仕事はケースバイケースですから、これらの教材で学習して資格を取得したからといって、それだけで遺品整理のプロフェッショナルになれるわけではありません。しかし一から遺品整理業を始めるうえで、知っておくべき基本的な事柄については一通り理解できるはずです。

遺品整理士認定協会のサービスが利用できる

遺品整理士の資格を取得することで遺品整理士認定協会の会員になれば、同協会が提供するサービスを利用できるようになります。例えば行政・病院・介護施設からの依頼のあっ旋や、協会からの人材紹介、大学教授や大手遺品整理業者の経営者クラスなどによるセミナーへの参加などです。

他の業者と情報を交換できる

握手を求める男性

協会主催のセミナーや懇親会に参加すれば、全国各地から集まった遺品整理業者との交流が生まれます。そこでは同じ悩みを抱えた業者や独自のサービスを展開している業者、遺品整理業で成功している業者など様々な業者との出会いがあるでしょう。

一から遺品整理業を始める場合はもちろんですが、長年遺品整理業を営んでいる業者でも、自社の知識や経験だけでは限界があります。しかし自社とは違う地域や現場で得たノウハウや情報を交換しあうことができれば、業務効率化やサービスの向上に役立てられるのです。

業界の体質改善に貢献できる

前述のように、現時点での遺品整理業界には問題がまだまだ残っています。遺品整理士認定協会や遺品整理士の資格の目的は、そうした問題の改善です。もし遺品整理士の資格を持たず、業界全体の動きを関知できていなければ、最悪の場合自社が業界の体質悪化に一役買ってしまう可能性もあり得ます。

ただし資格さえ持っていれば、協会の会員にさえなっていれば、それだけで業界の体質改善に貢献できるというわけではありません。セミナーや懇親会などを利用して業界の動向にアンテナを張るとともに、依頼者の心に寄り添うサービス法令の遵守を徹底して初めて、いち遺品整理業者として業界の体質改善に貢献していくことができるようになります。協会や資格は、あくまでそのためのツールだと考えるべきでしょう。

遺品整理士資格に法的効力はない

ここまで資格を取得することでできるようになることを紹介してきましたが、理解しておくべきなのは遺品整理士という資格はあくまで民間資格であって、法的な効力はないという点です。

例えば古物営業許可を持たずに不用品回収業者として不用品を買い取れば無許可営業として取締りの対象となります。あるいは一般廃棄物収集運搬業許可を持たずに、廃棄物を回収すればこれも無許可営業となります。しかし仮に遺品整理士の資格を持たずに遺品整理サービスを行っても、取締りや罰則の対象にはなりません。また遺品整理士の資格を持っているからといって、法律上優遇されるようなこともありません。

・遺品整理の基本を理解できる
・遺品整理士認定協会のサービスが利用できる
・他の業者と情報を交換できる
・業界の体質改善に貢献できる

またここまで上記の4つを紹介してきましたが、このうち「遺品整理士認定協会のサービスが利用できる」以外の3つについては、遺品整理士の資格を取得していなければできないというわけでもありません。独自に情報を収集したり、発信したりすれば、どれもやってやれないことはないのです。

考える男性。

しかしこれらを効率的に行おうと思ったとき、遺品整理士の資格取得や遺品整理士認定協会への入会は、非常に有力な選択肢となります。

なぜなら遺品整理士の資格は徐々に一般にも浸透しており、同協会は2017年時点で2万名以上の会員と950社を超える法人会員を抱えているだけでなく、多くの専門家とも提携しているからです。遺品整理士の資格を取得するかどうかを検討する際は、この点をよく理解したうえで、独自に情報収集・発信をする方が効率がいいのか、それとも資格を取得して協会に入会する方が効率がいいのかを考える必要があるでしょう。

遺品整理士資格は必須ではない

遺品整理士資格は、北海道を所在地とする一般社団法人遺品整理士認定協会が運営している民間資格です。正しい遺品整理についての情報や知識が手に入ったり、他の業者との情報交換の場を得られたりと、資格を取得すれば様々なことができるようになります。

一方であくまで民間資格であるため、「遺品整理士資格がなければ遺品整理の仕事はできない」「遺品整理士資格があるから法的に優遇される」といった法的拘束力はなく、古物営業許可などのように取得が必須というわけではありません

遺品整理士資格の取得にあたっては、この点をよく理解したうえで資格を取得するべきかどうか、協会に入会するべきかどうかを検討するようにしましょう。

【19/04/24追記】一般廃棄物収集運搬業許可の限定認可が可能に?

現在一部の自治体では本来取得できる業者が限られる、一般廃棄物収集運搬業許可を遺品整理業務限定で認可する動きが出ています。そのため遺品整理サービスを今後展開する予定がある場合で、かつ遺品整理士資格の取得を検討している場合は、管轄の自治体窓口に問い合わせてみましょう。

ただし2019年4月時点では、一般廃棄物収集運搬業許可の限定認可を受けるための行政への書類の書き方・提出方法など、協会側・自治体側の仕組みづくりが万全と言えず、限定認可が全国に普及していくにはまだ時間がかかると思われます。