笑顔が素敵な男性。

不用品回収は一回だけの利用になることが多い。だから接客に気を遣いすぎる必要はない」不用品回収業を営んでいて、もしこのように考えている人がいるのであれば、すぐに考えを改めることをおすすめします。

なぜなら不用品回収業はいまや立派な接客業であり、接客の良し悪しが経営に直結するからです。ここでは不用品回収業者にとって接客が重要な理由を解説するとともに、心理学や法律の観点から不用品回収業者が知っておくべき接客のポイントを紹介します。

INDEX
  1. 不用品回収業者に「接客」が重要な理由
    1. 「知らない人が生活空間に入ってくる」という異常さ
    2. インターネット社会の「口コミ」の影響力は大きい
    3. 信頼関係が生む大きなメリットを知る
  2. 不用品回収業者が知っておくべき接客のポイント
    1. 「清潔感」は大前提
    2. 全ては「気持ちの良い挨拶」から
    3. 「会社名・個人名」は必ず最初に名乗る
    4. 「明瞭会計」も重要な要素
    5. 去り際も気を抜かない
  3. 不用品回収業者の接客は短期決戦

不用品回収業者に「接客」が重要な理由

「初めて利用する」という人から電話での問い合わせがあり、どんな不用品があるか、いつ頃回収に行けばいいかを決定し、指定された日時に依頼者の自宅へ向かいます。回収の担当者と依頼者は当然初対面ですが、手短な挨拶と料金などの説明のあとすぐに作業に入ります。

担当者は靴を脱ぎ、依頼者の生活空間に足を踏み入れます。例えばベッドなら、リビングやキッチンを横切って、寝室に入ります。一人かもしくは複数人が不用品を運び出し、作業が終われば料金を受け取り、依頼者に契約書などの書面を渡して、担当者と依頼者のやりとりは終わりです。

短いものであれば、ほんの10分~15分の出来事でしょう。しかも不用品回収は生活の節目に依頼するケースが多いため、その依頼者が次も同じ不用品回収業者を利用する可能性も高くなりません。そのため「不用品回収業者は接客に気を遣いすぎる必要はない」と考える人がいても無理はありません。

しかしこれは顧客である依頼者の視点から不用品回収業者を見ること、そしてインターネット社会における不用品回収業の立ち位置を見ることをしていない考え方です。

「知らない人が生活空間に入ってくる」という異常さ

日常生活の中で、初対面の人が会って数分で自分の家の中に入ってくるということは滅多にありません。これは不用品回収業者にとっては「たくさんあるうちの1軒」でしかなくても、依頼者からすれば非常に緊張を強いられる状況です。このように依頼者の視点から不用品回収業者を見ると、それは不安や不信をかきたてることがわかります。

心理学の研究によれば、人間が他人を評価しようとすると第一印象と去り際の印象に結果が大きく左右されることがわかっています(「初頭効果」と「新近効果」)。つまりどんなにテキパキ作業をしていても、最初の挨拶や最後のお金のやりとりで依頼者に悪い印象を与えれば、全てが悪いように受け取られてしまうのです。

インターネット社会の「口コミ」の影響力は大きい

女性の口。

「1回きりなのだから、悪く思われても問題ない」と思うかもしれませんが、それは間違いです。元追手門学院大学大学院の姚佳さんらの研究によれば、インターネット上の口コミはその内容が信用できるかどうかに関係なく、買い物やサービスの選択にある程度の影響力を持つということがわかっています。またいくつかの研究で良い口コミよりも悪い口コミの方が信用されやすく、影響力も大きいこともわかっています。

つまり「1回きりだから」と言って、依頼者の感じている緊張や不安、不信を放っておくと、これから依頼者になるかもしれない人に対してマイナスの情報が流れてしまう可能性があるのです。裏を返せば「依頼者の緊張や不安、不信を解消できれば、口コミを通じて良い評価が流れる」ということです。これが「不用品回収業はいまや立派な接客業である」という理由です。

信頼関係が生む大きなメリットを知る

また、接客を通じて依頼者から良い印象を持ってもらえれば、回収の担当者と依頼者の間に信頼関係が生まれます。これはコストやリスクを抑えるという観点から、非常に大きな効果を発揮します。

というのも人間は一度「この人は怪しい」「この人は信用できない」と感じると先入観が生まれて、怪しいところや信用できないところなど、欠点ばかりが目につくようになります。そのため「この人は信頼できる」と思われていれば決して問題にならないミスも、「この人は怪しい」「この人は信用できない」と思われていると問題になってしまうのです。

これは本来起きなかったクレームにつながり、担当者の時間や労力、そしてそこに必要な人件費の無駄遣いにつながっていきます。逆に言えば、信頼さえされていれば、多少のミスは目を瞑ってもらえるということでもあります。

コストやリスクの観点からすれば、後者の状態を目指すべきでしょう。特に不用品回収業者は1日のうちにできるだけ多くの回収をこなし、できるだけ多くの不用品を回収することが利益に直結します。そのため担当者が長く拘束されるぶんだけ損失は大きくなり、担当者が稼働するほど利益も大きくなります。だからこそ接客による依頼者からの信頼の獲得は、不用品回収業者にとって非常に大きな意味を持つのです。

不用品回収業者が知っておくべき接客のポイント

前述したように不用品回収業者の接客時間は、短いケースで10分~15分と限られています。したがって、その短い時間のなかでできるだけ良い印象を与える必要があります。心理学の研究と特定商取引法の観点から、不用品回収業者が知っておくべき接客のポイントを4つ紹介します。

「清潔感」は大前提

依頼者に対面する前にまずやっておくべきが、服装や身だしなみを整えて清潔感を出すことです。なぜなら人間は「見た目が55%だから」です。というのも1971年にアメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」によれば、人間がコミュニケーションの相手から受け取る情報は以下の割合で構成されているのです。

メラビアンの法則円グラフ

不用品回収業者は依頼者の生活空間に入るため、できるだけ清潔感のある服装や身だしなみにし、全体の55%を占める視覚情報で良い印象を与える必要があります。

例えば引っ越し業界大手のアート引越センターは、新居に入る前に玄関先で靴下を履き替える「クリーンソックスサービス」を徹底しています。これは見た目の清潔感を演出するうえで非常に大きな効果があると考えられます。

不用品回収業者は1回の作業量が少ないため、その都度靴下を履き替えている暇はありませんが、無精髭、ヘアスタイルなどは依頼者が清潔さを感じるよう気を遣いましょう。

また嗅覚(ニオイ)と記憶は五感の中でも結びつきやすいとされています。そのため依頼者に会う前にはシャツなどについた汗のニオイにも注意する必要があるでしょう。

全ては「気持ちの良い挨拶」から

気持ちのよい挨拶をする男性。

いざ依頼者に対面したら、気持ちの良い挨拶で第一印象での高評価を勝ち取りましょう。気持ちの良い挨拶とは、以下の4点を満たしたものを指します。

1.目を見て笑顔で
2.背筋の伸びた、角度の浅いお辞儀
3.相手に届ける気持ちを込めた声の大きさ・トーン
4.挨拶にしっかりと集中している

1と2はメラビアンの法則における視覚情報にあたるものです。4も視覚情報で、何か作業をしながら挨拶をするのではなく、依頼者の顔を見て挨拶に集中している姿を見せます。

3は全体の38%を占める聴覚情報です。「気持ちの良い挨拶」というとやたらと大きな声を出す人もいますが、それはNG。相手に届けるような意識を持って大きすぎず、小さすぎずの声で挨拶をするのが理想です。トーンに関しては、1で笑顔をしっかり作っていれば、自然と優しくて明るいトーンになります。

挨拶は依頼者との一番最初の直接的なコミュニケーションです。必ず好印象を持ってもらえるよう、事前にしっかり練習しておきましょう。

「会社名・個人名」は必ず最初に名乗る

古物営業許可で回収をしている不用品回収者の場合、最初に会社名を名乗るのは特定商取引法でも定められているルールです。同法では会社の名前以外に、回収する品物の種類と、その品物の回収が目的で来たことを告げるよう義務付けられています。

しかし前述したように不用品回収業者は、依頼者と対面してからできるだけ早い段階で信頼関係を築く必要があります。そのためにはできるだけ詳しく素性を知ってもらうのが効果的です。したがって会社名だけでなく、担当者個人の名前も名乗り、可能であれば名刺も渡しましょう。

こうして素性を明らかにすることで、「怪しい人かもしれない」「この人を家に入れても大丈夫だろうか」といった不安や不信、緊張を解消してしまいましょう。

「明瞭会計」も重要な要素

また電話や作業開始前の段階で、わかりやすい料金システムに基づいた見積もりを提示し、内容について依頼者から同意を得ておくことも大切です。確かにこれには単に料金についてのトラブルがあとから発生するのを防ぐという意味合いもあります。しかしもっと重要なのは、「説得力」です。

第一に、わかりやすさはどんなテクニックよりも説得力を持ちます。これについてはある研究によって、人間は多すぎる選択肢よりもある程度選択肢を絞られた方が安心して決断できることがわかっています。これはわかりやすさが、人間の意思決定をスムーズにしているということを示しています。

第二に、人間は相手の話や意見に最初の段階で同意すると、そのあとも相手の言うことに強い説得力を感じる性質を持っています。これもジン・シューとロバート・ワイラーという研究者が行なった実験で明らかになった人間の心理です。

しかもこの実験によれば、説得力のある政治家のスピーチと車のCMといった全く無関係なものでも、後から見たものに説得力を感じることがわかっています。つまり見積もりに同意することで、回収担当者のそれ以外の言動にも説得力を感じる可能性があるのです。

以上のことからわかりやすい料金システムと事前の見積もり提示と同意、つまり「明瞭会計」は不用品回収業者の接客レベルの向上に効果があると言えるでしょう。

去り際も気を抜かない

作業が終わって依頼者宅を去る際も、気を抜かずに好印象を与えるように言動に注意を払いましょう。特に金銭授受と去り際の挨拶は、依頼者にとって不用品回収業者の最後の姿になります。見積もりの料金と変更があった場合は、再確認したうえで納得してもらい、過不足なくお金を受け取ります。去り際の挨拶では来た時と同じように、4つの条件を満たした気持ちの良い挨拶をしましょう。

もちろん作業中の会話などでも依頼者からの印象を良くすることは可能です。しかしそれは、好印象を作るにあたって最も重要な「最初」と「最後」の接客技術を身につけてからで構いません。まずは第一印象と去り際の印象を良くすることに集中しましょう。

不用品回収業者の接客は短期決戦

不用品回収業者の接客は、初対面から作業を終えて依頼者宅を後にするまでのごく短い時間です。その間にどれだけ好印象を抱いてもらい、口コミやリピートにつなげるかが重要なのです。「不用品回収業者の接客は短期決戦」と心得て、ひとつひとつの接客に集中して臨みましょう。