陳列されている椅子。

お客様が商品を実際に目に見て、手に取れるのは実店舗の強み。そのため実店舗としてリサイクルショップを構える以上、店頭での陳列を疎かにはできません。しかしリサイクルショップを始めたばかりの人や、これまで小売業はやってきたものの、中古品の販売経験は浅いという人などの場合、リサイクルショップでの商品の陳列ではうまくいかないことも多いのではないでしょうか。

ここではリサイクルショップのはじめかた第三弾として、陳列の基本や具体的なテクニックについて解説します。

<これまでのリサイクルショップのはじめかた>

第一弾:リサイクルショップのはじめかた【買取・仕入れルート編】
第二弾:リサイクルショップのはじめかた【販売ルート編】

INDEX
  1. リサイクルショップの陳列の原則を知る
    1. 買いやすい陳列とは何かを理解する
    2. フェース数の最大化を実践する
    3. 一番単品を設定し、アイテム数・売場面積を強化する
    4. 買取を意識した陳列を行う
    5. 「いつ行っても同じだな」を防止する
  2. 超実践的!リサイクルショップの陳列テクニック
    1. お店の客層を意識した陳列にする
    2. 高機能商品はポップ×接客で売る
    3. 家具はIKEA式陳列も効果的
    4. 個性的なデザインの商品を前面に出す
  3. お客様を見て、お客様が見たいものを見せる

リサイクルショップの陳列の原則を知る

取り扱う商材に売れ筋の商品や売りたい商品など、リサイクルショップの陳列においては各店舗の違いが色濃く出る部分も確かにあります。しかしそれでも、必ず知っている必要がある原則はあります。以下ではそのうち5つを紹介します。

買いやすい陳列とは何かを理解する

陳列には、売場面積に対して大量の商品を陳列し、数ある商品の中から自分にとっての宝物を探すような感覚を提供する圧縮陳列や、ブランド品などを美しく見せるためにショーウィンドウやステージを使って商品を目立たせる展示陳列など、様々な手法があります。

しかしどのような陳列をするにしても、最も大事なのはお客様にとっての買いやすさです。例えば圧縮陳列が行き過ぎて、商品を棚から引き出したら他の商品まで崩れてきてしまうようでは、買いやすい陳列とは言えません。またいくらスタイリッシュな展示陳列をしても、そのせいで売り場の商品数が少なくなり過ぎれば、欲しいものが見つからなくなり、これもまた買いやすさとはかけ離れてしまいます。

リサイクルショップの陳列も、こうした買いやすさをスタート地点にして考える必要があります。

フェース数の最大化を実践する

リサイクルショップの最大の特徴は、新品ではなく中古品を販売している点にあります。同一の商品でも状態によって価格が異なることや、人気などによって価格に変動があることなど、新品と中古品には様々な違いがありますが、特に理解しておくべきなのは基本的に中古品は現品限りであるという点です。

そのためリサイクルショップの陳列は、たった一つしかない現品限りの商品を、どのように見せて、どのように売るかが非常に重要になります。

古本屋の陳列はフェース数の最大化を実践している。

現品限りであるという中古品の性質を陳列に反映させるには、フェース数の最大化を意識する必要があります。フェース数とはお客様から見える商品の顔の数のことで、フェース数の最大化とは限られた売り場の中でできるだけ多く見せることを指します。例えば古本店では天井に近いところまで棚を作り、商品の背表紙で売り場を埋め尽くしていますが、これは売り場におけるフェース数の最大化の典型的な実践例です。

新品を売るお店では、たくさん同じ商品があるため、そのうちのいくつかがお客様の目に止まれば売れる可能性が生まれます。しかしリサイクルショップでは現品しかないため、その商品が売れるためにはお客様の目に止まる回数を増やすしかありません。実際、新品を取り扱うお店に比べて、中古品を取り扱うお店でお客様が欲しいと思う商品に出会う確率は低く、来店客数に対しての買上客数も新品を取り扱うお店より低いとされています。

お客様の目に止まる商品の数を増やし、お客様が欲しいと思う商品に出会う確率を高めること。それがフェース数の最大化が持つ役割なのです。

一番単品を設定し、アイテム数・売場面積を強化する

一番単品とは同一商圏内で最も品揃えが良く、商圏内での相場を決めるプライスリーダーになっている商品を指します。この一番単品を持っているリサイクルショップは集客力・収益力に大きなアドバンテージを得られます。

では一番単品を持つためには何が必要なのでしょうか。それはその商品における他店を圧倒するアイテム数と売り場面積です。人間は心理的に通常の1.3倍の違いがあると「これは違うものだ」と実感しやすいとされています。これをアイテム数と売り場面積に応用するとアイテム数を他店の1.3倍、売り場面積を他店の1.69倍(縦1.3×横1.3)以上にすれば、お客様から見て「この店は他の店とは違う」と思ってもらえることになります。

まずは「ウチの店はこの商品で行く」もしくは「現時点のウチの店で一番強いのはこの商品」と一番単品を設定し、その商品のアイテム数と売り場数を強化する。これがリサイクルショップとして成功するための大きなポイントとなります。

買取を意識した陳列を行う

しかしここでもリサイクルショップならではの問題が発生します。というのも新品の仕入れとは違い、中古品の仕入れは買取に依存しているからです。そのため買取がなければ在庫がなく、在庫がなければ売り場のアイテム数を増やすこともできません。

リサイクルショップのはじめかた【買取・仕入れルート編】でも見たように、経験や実績のないリサイクルショップがまず検討するべき仕入れルートは不用品回収業者と消費者です。そしてこのうち消費者すなわちお客様からの仕入れは、買取促進チラシと店頭の陳列が大きなカギを握っています。

一番単品の買取を強化するためには、まずお客様に「この商品を買い取っています」というアピールをする必要があります。店内で目にしなかったり、目にしても目立たなかったりする商品をお客様は売りに来ようとは思いません。しかし一番単品になるほどその商材の在庫がない場合、前述したような他店比1.3倍のアイテム数と1.69倍の売場面積を用意することも難しいでしょう。

ここで活用するべきが、前述した展示陳列や島陳列などの目立つ陳列方法です。自店舗がその商品を扱っているという情報をお客様により強く伝えられるような陳列方法を選べば、少ないアイテム数でも買取強化につながります。

「いつ行っても同じだな」を防止する

リサイクルショップにかかわらず、来店頻度はそのまま買上頻度に直結します。しかしお客様はいつも同じような品揃えのお店に、高い頻度で足を運ぼうとは思いません。「いつ行っても同じだな」と思えば、わざわざ行かなくても何があるかわかっているからです。リサイクルショップはこれを防がなくてはなりません。

ここで重要になるのが在庫管理や価格管理などですが、陳列の管理も大切な要素です。例えば商品の顔が正面から見えるフェースアウト陳列では、什器に吊るされていて商品の顔が横からしか見えないつるし陳列に比べて、商品が視界に入るお客様の数は100倍以上も違うと言われています。

「いついっても同じだな」と退屈している男性。

仮にフェースアウト陳列をされているのになかなか売れない商品があった場合、これはお客様からすれば「何回見ても欲しいと思わない商品であり」同時に「いつ来ても同じ場所にある商品」になります。これがお店そのものへの「いつ行っても同じだな」という認識に変わるのは時間の問題です。

もちろん商品回転率や坪効率といった数値から、どこに陳列しているどの商品がどれくらいの期間売れていないかを分析し、その結果に基づいて論理的に陳列をリフレッシュできれば理想です。しかしそれが難しくても、売り場の鮮度感を意識するだけでも「いつ行っても同じだな」を抑えることは可能です。

例えばフェースアウト陳列で1週間売れないものは、つるし陳列の商品と入れ替えてみたり、目につく場所に陳列しているにも関わらず売上が伸び悩んでいる商材を別の商材と入れ替えてレイアウトを変更してみたり、できることはいくらでもあります。お客様に飽きられないような売り場づくりを心がけましょう。

超実践的!リサイクルショップの陳列テクニック

次にここまでの内容よりもさらに具体的な陳列テクニックについて紹介します。簡単に導入できるものばかりを選んだので、気になるものがあればぜひ今日から試してみてください。

お店の客層を意識した陳列にする

お店の客層と陳列がマッチしていないと、せっかく来店してくれたお客様が目当てのものを見つけられずに終わってしまいます。そのため、客層と陳列は意識して合わせる必要があります。

例えば客層の若いお店であれば、アパレルや雑貨のセレクトショップを参考にして陳列をしてみたり、主婦層が多いお店であれば、スーパーなど彼女たちがよく行くお店の陳列を参考にしてみたりしてみましょう。一番単品に設定する商品や買取を強化する商品も、ターゲットとなる客層がよく買い物をする場所を意識して設定していけば、より強くお客様にアピールできます。

こうした工夫を実践するためには、まず自店舗にやってくるお客様をよく見ている必要があります。何よりもまずお客様を見ること。これは商売の基本ですが、日頃の業務に忙殺されていると忘れがちな基本なので、陳列を通して肝に命じておきましょう。

高機能商品はポップ×接客で売る

インバーター搭載の洗濯機や真空チルド付きの冷蔵庫など、最新の設備や機能が搭載された商品は、お客様からすれば未知の商品です。未知の商品にお金を出そうというお客様は稀ですから、未知を既知をするためにはリサイクルショップ側の努力が必要になります。

商品POP

その際に役に立つのが機能を説明するポップ、そして実体験(なければネットの口コミなど)に基づいた接客です。お客様自身で判断できる商品は、買いやすく陳列しているだけでも売れていきますが、こうしたお客様に判断基準がない商品に関しては、積極的に接客することも時には必要になることを覚えておきましょう。

家具はIKEA式陳列も効果的

IKEAはテーマごとに家具を組み合わせて陳列することで、それを見た人が商品をどのように使うのかをイメージしやすいようにしています。

確かにリサイクルショップでは机は机、冷蔵庫は冷蔵庫というように商材別に分類して陳列するお店が一般的です。しかし状態がきれいだったり、年式が新しいものが揃った場合は、店舗の一角にこうしたIKEA式陳列を取り入れても効果的でしょう。

個性的なデザインの商品を前面に出す

リサイクルショップの陳列は買いやすさが第一だと書きましたが、お客様から飽きられないためには「この店は、こんな商品も売ってるんだな」といった驚きを提供する必要もあります。そのために効果的な方法の一つが、個性的なデザインの商品を前面に出して陳列する方法です。

売れるかどうかは別にして、「なんだ、これは?」という品物が目につくところに置かれていると、お客様の「この店には面白いものがありそうだ」という期待を高められます。それは来店頻度の向上につながり、買上頻度の向上へとつながって行くでしょう。陳列は買いやすさだけでなく、目で見た面白さが効果を発揮する場合もあるのです。

お客様を見て、お客様が見たいものを見せる

リサイクルショップの陳列を考えるうえで最も意識するべきはお客様を見て、お客様が見たいものを見せるということです。これができれば、間違いなく利益につながります。問題はそのための陳列をどうすれば実現するかという点です。その答えはお店によって少しずつ変わってきます。ここで解説した原則やテクニックを試しながら、自店舗にとって最も理想的な陳列とは何かを模索していってください。