並べられた冷蔵庫

「特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)」は家電の適切な処分方法について定めた法律です。この法律はリサイクル処理を前提に使用済みの家電を回収するには、それが廃棄物か有価物かに関わらず、一般廃棄物収集運搬業許可もしくは産業廃棄物収集運搬業許可が必要であると定めています(リユース品としての買取は適用外)。

しかしこのルールには例外があり、この例外を活用すれば一般廃棄物収集運搬業許可を持たない不用品回収業者でも、リサイクル処理を前提とした家電の回収ができるようになります。ここではこの家電リサイクル法の例外について解説するとともに、これを活用して不用品回収業者の業務に役立てる方法を紹介します。

INDEX
  1. 不用品回収業者が知っておくべき「家電リサイクル法の例外」
  2. 家電リサイクル法の例外を活用しよう
    1. ステップ0:産業廃棄物収集運搬業許可を取得する
    2. ステップ1:不用品回収業+リサイクルショップ業
    3. ステップ2:家電リサイクルセンターに入会する
    4. ステップ3:自社内での流通を確立する
  3. 「家電リサイクル法の例外」はしっかり活用する

不用品回収業者が知っておくべき「家電リサイクル法の例外」

家電リサイクル法はブラウン管・液晶・プラズマテレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、衣類洗濯機・乾燥機の4品目を対象として、使用済家電の適切な処分方法について定めています。

この法律のルールに従った場合、使用済みの家電は排出者である「消費者」と、販売者である「家電販売店」、生産者である「家電メーカー」の三者間で排出・回収・リサイクルが行われます。まず消費者は家電販売店に行って「リサイクル券」を購入します。この際、消費者は家電販売店が公表している収集運搬料金と、家電の種類によって定められているリサイクル料金を支払います。消費者の依頼を受けた家電販売店は、消費者の自宅などに家電の回収に向かいます。

そうして引き取った家電は、家電メーカーに引き渡され、家電メーカーが構築している処理ルートでリサイクルされていきます。これがいわば家電リサイクル法における正規のルートです。

家電のリサイクル

しかし家電リサイクル法には例外的なルートがあります。それが「消費者」「家電販売店に委託を受けた不用品回収業者」「リサイクル事業者」の三者間で排出・回収・リサイクルが行われるルートです。

まず消費者が家電販売店に回収を依頼すると、家電販売店から委託先の不用品回収業者に連絡が入ります。すると不用品回収業者が消費者のところに向かい、消費者から収集運搬料金とリサイクル料金を受け取り、家電を回収します。回収された家電はリサイクル業者や家電メーカーの手に渡り、リサイクルされていきます。

一般家庭から出る使用済家電は一般廃棄物に分類されるため、通常回収には一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。しかし家電リサイクル法の4品目に関しては、家電販売店からの委託があれば「一般廃棄物収集運搬業許可もしくは産業廃棄物収集運搬業許可」を取得していればリサイクル処理を前提とした回収ができるようになります。

一般廃棄物収集運搬業許可は様々な理由から取得が非常に難しい許可ですが、これに対して産業廃棄物収集運搬業許可は比較的取得しやすい許可です。つまり本来一般家庭から出る使用済家電を回収できない不用品回収業者でも、産業廃棄物収集運搬業許可を取得していれば、家電リサイクル法の例外を活用して合法的に家電を回収できるというわけです。

回収を依頼される家電の中には、売り物にならずに処分(リサイクル)しなければならない品物が必ずあります。そこで家電リサイクル法の例外を活用しないのであれば、回収の依頼を断らざるを得ません。これは依頼者にとっても不便ですし、不用品回収業者自身にとっても心苦しい対応になります。

しかしだからといって家電リサイクル法を無視して回収すれば、違法な営業になってしまいます。依頼者から「この家電はどうするんですか?」と質問されれば、お茶を濁すか嘘をつくかしかできません。

依頼者の「古い家電でも、壊れた家電でも回収してくれた」という満足につながり、かつ不用品回収業者自身が「売り物にはなりませんが、合法的な方法でちゃんと処分しています」と自信を持って言えるようになるためにも、家電リサイクル法の例外の活用は必要不可欠なのです。

家電リサイクル法の例外を活用しよう

以下では家電リサイクル法の例外を活用するためのステップ0~3を紹介します。

ステップ0:産業廃棄物収集運搬業許可を取得する

まずは不用品回収業者として、産業廃棄物収集運搬業許可を取得しましょう。これがなければ家電販売店からの委託が受けられないため、家電リサイクル法の例外を活用できません。もちろん「古物営業許可」不用品回収業者として必須の許可ですから、産業廃棄物収集運搬業許可よりも前に取得しておかなければなりません。

この許可を取得するためには10個ある欠格要件に当てはまらないこと、「公益社団法人産業廃棄物協会」による講習会を受講・修了していること、産業廃棄物の収取運搬を継続的に行える経営状態にあること、収集運搬に必要な「車両」「容器」「駐車場」があることが前提条件です。必要書類や取得にかかる時間についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、参照してください。

ステップ1:不用品回収業+リサイクルショップ業

家電の小売店

次に不用品回収業に加えて、リサイクルショップ業を始めましょう。つまり例外的なルートのうち、「家電販売店に委託を受けた不用品回収業者」「リサイクル事業者」の2つを自前でやってしまうのです。こうすれば、今までリサイクルショップなどに持ち込むことで差し引かれていた分の利益がそのまま自分のものになるので、1回の回収あたりの収益をアップさせられます。

「でもリサイクルショップを開くとなると、店舗を構えたり、陳列を考えたり、人を雇ったりしないといけないのでは?」と思うかもしれません。確かにそれができれば理想的ですが、はじめはそこまで考えなくても構いません。例えば現時点で倉庫に使っている場所で、知り合いや同業者に対してだけに販売するという形から始めてもOKです。

その際は仮に仕入れた家電が100台あったとしたら、そのうち年式の新しい20台だけを商品だということにすれば、メンテナンスや動作チェックの手間が省けます。そして商品化に手間や時間がかかるそれ以外の80台は、通常どおりリサイクルショップなどに持ち込んで収益化します。このやり方なら人を雇わなくてもリサイクルショップ業を始められるはずです。

法人としてリサイクルショップを始めるのであれば、登記手続きなど手間も時間もお金もかける必要がありますが、個人事業主として始めるだけなら開業届を出す程度で始められます

ステップ2:家電リサイクルセンターに入会する

中古家電を販売しているリサイクルショップであれば、家電販売店としてリサイクル券を発行できるようになります。しかしリサイクル券は「一般財団法人家電製品協会 家電リサイクル券センター(RKC)」という団体から発行されたものでなくてはなりません。またこの団体に入会していない事業者が家電リサイクル業務を行おうとすると、わざわざ消費者に郵便局に出向いてもらい、リサイクル券の記入とリサイクル料金の振込をやってもらう「料金郵便局振込方式」でしか取引ができません。

一方、RKCに入会して入れば家電販売店がリサイクル券を発行する「料金販売店回収方式」で取引できるようになります。だからこそRKCに入会する必要があるのです。

RKCへの入会の条件は「店舗を構えて家電4品目を販売していること」です。このためにステップ1で小規模でもリサイクルショップ業を始めておく必要があるというわけです。

しかし単に「家電4品目を販売したことがある」では入会できません。第一に2018年4月に10台、2018年5月20台といったように2ヶ月以上の継続的な販売実績が必要です。例えば2018年4月にリサイクルショップ業をスタートさせたばかりでは入会を認めてもらえないということです。第二に審査の際に登記簿謄本(法人の場合)などの開業を確認できる書類と、取引した家電の型番を確認できる買取・販売伝票の提出が必要です(詳しくはRKCの問い合わせセンターまで)。

RCK入会資料

入会が認められると、RKCから「リサイクル料金(再商品化等料金)一覧表」や「家電リサイクル券システム運用マニュアル」などが送られてくるので、これらを元にリサイクル券を運用していくことになります。

ステップ3:自社内での流通を確立する

ステップ2まで進むと、自社内で家電4品目の「委託→回収→リサイクル処理業者への持ち込み」という一連の流れをまかなえるようになります。

例えば個人名義のリサイクルショップ(家電販売店兼リサイクル事業者)から法人名義の不用品回収業者に、家電の回収を委託しリサイクル券を発行。回収した家電をリサイクル処理業者に持ち込む、といった形です。この方法なら、外部の家電販売店からの委託を待つ必要がないため、迅速かつ積極的に回収に動けます。

「家電リサイクル法の例外」はしっかり活用する

一般廃棄物収集運搬業許可は限られた事業者にしか与えられない許可です。その限られた事業者だけでは、使用済家電の全てを回収するのは不可能です。しかしだからといって使用済家電を回収しなければ不法投棄が増加したり、限りある資源が有効活用されなかったりしてしまいます。

「家電リサイクル法の例外」はこうした事態を未然に防ぐために設けられたものだと思われます。したがって「家電リサイクル法の例外」の活用は、単に依頼者や不用品回収業者のためだけでなく、家電リサイクル法の意図するリサイクル社会を実現するためのものとも言えるでしょう。