リサイクルショップと不用品回収業者

売上や利益をアップさせるための一つの方法として、業務の拡大が挙げられます。

リサイクルショップが不用品回収サービスをスタートさせたり、不用品回収業者が自前のリサイクルショップを開店したりするのも、業務拡大の一種です。

しかしリサイクルショップ業から不用品回収業、不用品回収業からリサイクルショップ業への業務拡大には、実は「別屋号で」運営するという方法もあります。

ここではリサイクルショップ業と不用品回収業を「別屋号で」運営するメリットとデメリットを紹介するとともに、運営の際に注意するべき3つのポイントを解説します。

INDEX
  1. 「別屋号で」運営するメリット
    1. なぜ「別屋号で」運営する必要があるのか?
  2. 「別屋号で」運営するデメリット
  3. 「主たる営業所等」を同じ住所にして運営するための3つのポイント
  4. まとめ

「別屋号で」運営するメリット

メリット

リサイクルショップ業と不用品回収業の両立には、わざわざ別屋号で運営しなくとも、以下の2つのメリットがあります。

・仕入れ経路の拡大
・取扱品目の拡大

リサイクルショップに買取を依頼する顧客層と、不用品回収業者に回収を依頼する顧客層には、1点大きな違いがあります。それは「売れると思っているかどうか」です。

リサイクルショップの顧客層は「どんなものでも売れる」と考えている場合が多い傾向にあります。したがって、家電・家具などの出張買取で料金を請求すると「お金がかかるなら」と成約に至らないケースも少なくありません。

これに対して不用品回収業者の顧客層は「お金になったら運がいい」程度の認識を持っている場合が多いので、出張買取で料金を請求しても成約につながるケースがほとんどです。

そのため、リサイクルショップが不用品回収業を新たに始めると、仕入れ経路が拡大し、より豊富な在庫を手に入れられる可能性が高いのです。

逆に不用品回収業者がリサイクルショップ業を始めると、取扱品目の拡大につながる可能性があります。

元来リサイクル家電の4品目(エアコン、テレビ(ブラウン管式、液晶・プラズマ式)、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)のうち、売り物にならずに処分(リサイクル)しなければならない品物を回収するには、一般廃棄物収集運搬業許可が必要です。

しかし「家電リサイクル法の例外」をフル活用しよう!一般廃棄物収集運搬業許可なしでも合法的に家電を回収する方法でも解説しているように、リサイクル事業者が不用品回収業者に対してリサイクル券を発行すると、例外的に産業廃棄物収集運搬業許可でも回収ができるようになります。

この例外を利用した場合、取扱品目を拡大できる可能性がある、というわけです。

なぜ「別屋号で」運営する必要があるのか?

しかしリサイクルショップ業と不用品回収業を別屋号で運営せずに、「リサイクルショップが不用品回収サービスをはじめた」「不用品回収業者がリサイクルショップをはじめた」という形にすると、一つ大きな問題が生じます。

それは「料金を取って回収したものを売りさばいている!」というクレームが非常に多くなるのです。本来不用品回収サービスの料金は、スタッフの人件費やトラックのガソリン代をまかなうためのものですから、クレームを受けるいわれはありません。

しかし一般消費者の中には、「お金をとって仕入れたものを、さらに利益を乗せて売っている」と考えてしまう人も少なくないのです。

こうしたクレームへの対応コストを回避する方法の一つが、別屋号による運営です。一般消費者から見て、「回収」と「中古品販売」が直接結びつかないようにするわけです。

したがって、リサイクルショップ業と不用品回収業を別屋号で運営するメリットは、次のように言うことができます。

・お客様からのクレームへの対応コストを削減できる

「別屋号で」運営するデメリット

デメリット

一方で、別屋号で運営するデメリットもあります。主なデメリットは以下の2点です。

・人件費が増える可能性がある
・古物商許可取得のコストがかかる。
・不用品回収業者がリサイクルショップ業を始めると、クレームの増加につながる可能性がある

リサイクルショップの出張買取チーム、あるいは不用品回収業者の回収チーム、これらを業務拡大に伴って新しく作る場合は、どうしてもそのための人件費が必要になります。

しかし業務拡大に人員増はつきものですから、ある意味で仕方のない出費と言えるでしょう。

また別屋号でリサイクルショップ業と不用品回収業を運営する場合は、それぞれの会社に古物商許可の取得が必要になります。

古物商許可の取得方法は古物商許可の届け出方法と必要な提出書類で詳しく解説していますが、書類を用意したり、警察署に行ったりする手間がかかるうえ、19,000円の手数料もかかります。

ただ、古物商許可は一度取得すれば、そのあと更新料などはかかりません。業務拡大のための一時的なコストと考えれば、大した問題ではないでしょう。

これらに対して、無視できないデメリットが3つ目です。前述したように不用品回収業に比べ、リサイクルショップ業の顧客層の方が「不用品の引き取りに料金がかかること」に対して拒否反応が強い傾向にあります。

そのため新たにリサイクルショップ業を始めることで、「どうして料金がかかるんだ」というクレームへの対応コストが増加する可能性があるのです。

この点に関してはスタッフ教育を徹底し、対応マニュアルを用意するなどの施策が必要になるでしょう。

「主たる営業所等」を同じ住所にして運営するための3つのポイント

指を差す女性

別屋号の古物商許可の取得する際、「主たる営業所等」を同じ住所にして運営したいと考える人も多いのではないでしょうか。

結論から言えば、主たる営業所等を同じ住所にしてリサイクルショップと不用品回収業を運営することはできます。しかし本来、別々の会社が主たる営業所等を同じにする場合は、以下の条件を満たしている必要があります。

・受付するスタッフを分ける
・レジを分ける
・それぞれの古物商プレートを見える場所に掲示する
・帳簿を分ける
・入り口を分ける
・完全に違う店舗として営業する

こんなことをすれば人件費も設備費も余計にかかってしまいます。そこで活用したいのが、不用品回収サービスの「店頭での販売がない」という点です。

というのも、店頭での販売がない場合は以下の3つの条件を満たしていれば、別々の会社が主たる営業所等を同じにすることが認められるからです(※)。

・リサイクルショップの事務スペース内に不用品回収業専用のスペースを作る
・不用品回収業専用のスペース内に古物台帳を保管する
・不用品回収業専用のスペース内に古物商プレートを掲示する

これなら、よほど事務スペースが狭くない限りは、条件を満たして営業できるはず。主たる営業所等の住所の問題で、これまで別屋号での営業を断念していた人は、ぜひ一度検討してみてください。

※大阪府警察古物商関連担当者に確認済み。ただし、細かいルールは所轄の警察署によって微妙に変わるため、個別に確認していただく必要があります。

まとめ

リサイクルショップ業と不用品回収業の多角経営は、仕入れや集客の面でメリットがあります。しかし単純に業務を拡大すると、余計なクレーム対応コストがかかるおそれがあります。

これを回避する方法の一つが、別屋号による運営です。古物商許可の取得費用や、人件費などは必要になりますが、そのぶん売上・利益アップが期待できます。

業務拡大を検討しているリサイクル業者の方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。